メキシコに建設中の3Dプリント住宅を公開

貧困救済のためメキシコ南部に建設中の世界初の3Dプリント住宅コミュニティが公開

貧困によるホームレス問題に取り組む非営利団体 New Story は、貧困層に手頃な価格の住宅ソリューションを提供する財団 ECHALE、サンフランシスコに拠点を置くデザインスタジオ Fuseproject およびテキサス州オースティンに本拠を置く建設技術スタートアップ ICON 等と共同で展開中の3Dプリント住宅供給プロジェクト「世界初の3Dプリント住宅コミュニティ」の近況として、メキシコ南部にあるタバスコ州に建設中の世界初の3Dプリント住宅コミュニティとして建設された家の一部を公開した。

今回公開された3Dプリント住宅の大きさは500平方フィートで、LDKに2つの寝室と浴室を備え、屋外で食事をするための小さなポーチエリアも設けられている。

2014年に発足したNew Storyはこれまでに、ハイチ、エルサルバドル、ボリビア、メキシコなどに2,700戸以上の住宅を建設。
現在展開中の同プロジェクトは、1日3ドル未満で生活しているメキシコ・タバスコ州の50家族に世界初の3Dプリント製住宅コミュニティを提供するための非営利な活動で、ICONの超大型建設用3Dプリンタ「Vulcan II Construction 3D Printer」を活用して、安価な住宅を迅速に建設し、ホームレス状態で苦しむ貧困層に安全な住環境を提供する。
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チームは、プロジェクト開始時にタバスコ州の政府関係者と協力してこの地域の500以上の家庭を調査し、最も支援を必要とする家族を特定。このコミュニティに入居予定の50世帯の平均収入は1ヶ月あたり平均76.50ドルで、同地域で最低限の生活水準を保つのに必要な金額を大きく下回っている。また、コミュニティ入居予定の家族が現在住む場所のほとんどが近隣の河川に近い場所のため、雨季による洪水により毎年大きな被害を受けている。

コミュニティに参加する予定の家庭は、1ヶ月あたり約400ペソの無利子の住宅ローンを利用。この金額は、低所得者層でも支払い可能な最低限の額で、7年間の支払い期間が設けられている。そしてのこの住宅ローン資金は、家族が時間の経過とともに資金の使用方法について投票するコミュニティ投資ファンドにプールされる。こうすることで家族はコミュニティに長期滞在する可能性が高くなり、コミュニティをより良く管理し、将来的な計画プロセスを通じてより有意義なフィードバックを得ることができるようになる。
住宅建設に必要な残りのコストについては、New Storyからの補助金や寄付金から賄われる。

 

3Dプリント技術による住宅建設のメリットとは

従来の建築方法は作業が断片化されており、無駄が多く非常に長い時間を必要とする。また、高騰する人件費の問題、物流や廃棄物処理などに多くのエネルギーを消費している。これとは対照的に、3Dプリント技術には次のメリットがあるとされている。

  • スピードの向上(工期の短縮)
  • 建設中に発生する怪我や事故の減少、肉体的疲労の軽減
  • 安価な材料によるコスト効率の高さ
  • コンクリート材料による快適性とエネルギー効率
  • 3Dプリンティングにより、連続した切れ目のない熱エンベロープが生成可能
  • 1つの技術で、基礎や構造、断熱など様々な用途に適用可能
  • 廃棄物がゼロに近い
  • 高い設計自由度

建設用3Dプリンタで建設される住宅は約24時間で完成するが、当然そのままでは住むことはできない。同プロジェクトでは、土地の造成や基礎工事、屋根工事、ドアや窓などを含めた内装工事などの作業に地元の人を雇い、雇用機会も創出。

建設予定の3Dプリント住宅は合計50軒で、今回公開された家を含め2軒が既に完成。残り48戸については2020年までに完成を予定している。


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