環境やインフラ問題に対応する自律型3Dプリントシステム

GXNは、建設の未来を描いた自律型3Dプリントシステムに関するプロジェクトを発表

デンマークの建設会社 3XN によって設立された独立系研究組織 GXN Innovation は、デンマークのAdditive Manufacturing製造技術の促進を目的とした組織 Dansk AM Hub およびコペンハーゲンに拠点を置く建築設計スタジオ MAP Architects と共同で、地球規模の課題に対応する自律型ロボット3Dプリントシステム開発プロジェクト「Break the Grid」を発表した。
この研究は、人口増加や気候変動という世界規模の課題に対し、より効率的に対処するため、陸上、水中、空中で活躍する自律型3Dプリンタを活用することを目的としている。

このプロジェクトの第一の課題は、世界規模のインフラ環境の悪化に対処することである。人と物資の輸送に時間とコストの掛かる遠隔地などにおいて、コンクリート(アスファルト)構造物の損傷を引き起こす可能性があるクラックの悪化に対処するため、炭酸カルシウムの形成を可能にする「Trichoderma Reesei」と呼ばれる真菌と混合した充填剤を備えた自律型ロボット3Dプリンタを利用してコンクリート(アスファルト)構造物の状況を偵察し、クラック箇所を識別して自動的に修復する。

第二の課題は、気候変動によって引き起こされる沿岸被害に対処するもので、カキから生成した特殊な接着剤と同じ特性を持つ合成接着剤を利用し、ロボット3Dプリンタが、水中で接着剤と海底の砂を混ぜ合わせたプリント材料を生成し、海洋生物にとって不可欠な生息地を提供しながら、沿岸を保護することができる人工のサンゴ礁構造を3Dプリントする。

三つ目の課題は、特に主要都市における高層ビルの老朽化による熱とエネルギーの損失に対するものとなる。既存のファサードの多くは、さらなる劣化やエネルギー損失を防ぐため、より良い断熱材の充填や修理を必要とする。そこで研究チームは、ガラス繊維と高性能ポリマーを組み合わせた断熱材料の使用方法を研究。古い高層ビルの熱橋を識別し、ドローン(無人機)ベースの3Dプリントシステムで断熱材を埋めるための仕組みを考案。人間による対応が困難な高層ビルなどの修復作業にも対応可能で、人件費や材料コストを大幅に削減することが可能になる。

現時点では研究段階のプロジェクトであり、いま直ぐに建設業界に大きな影響を与えることはないが、デザインとテクノロジーを組み合わせたこのような建設技術が新しい価値観を生み、建設業界をどのように進化させることができるかを理解してもらうことに役立つと考えられる。


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