ノートルダム大聖堂再建に3Dスキャン技術を活用!?

ノートルダム大聖堂の再建に高精度な3Dスキャンデータを活用

2019年4月15日(現地時間)、ゴシック建築を代表する築850年の建物で、ローマ・カトリック教会の大聖堂である「ノートルダム大聖堂(Cathédrale Notre-Dame de Paris)」が、15日夕刻に発生した大規模な火災(改修工事中の失火の可能性)により、大きな被害に見舞われた。
発生から約9時間後に火は消し止められ、2棟の塔など大聖堂の主要な構造物は焼失を免れたが、12世紀初頭に建築されたとされる尖塔と屋根が崩落し、世界中に大きなショックを与えた。


Photo : Chesnot/Getty Images Europe

エマニュエル・マクロン仏大統領は事故直後、大聖堂の再建を国民に約束する声明を発表。これに呼応するように、国内外から大聖堂再建に対する支援の輪が広がり、「グッチ(GUCCI)」オーナーのピノー氏や、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」等を擁するLVMHグループの大株主であるアルノー家など、フランスを代表する富豪等も数百億円単位の寄付を表明している。


Photo : Christophe Morin

大聖堂再建に向けた寄付金額は、4月17日現在で800億円を超えており、その額は今後更に増え続けることが予測される。しかし、修復に必要な資金が十分に集まったとしても、これほど歴史ある建造物を数年内に再建するのは容易ではない。

そこで注目されているのが、3Dスキャンなどのデジタル技術である。
ニューヨーク州のヴァッサー大学准教授で、美術史家Andrew J. Tallon(アンドリュー・タロン)博士は、ノートルダム大聖堂の正確なデジタル複製を作成するため、2010年から大聖堂の建物内外をレーザースキャナでスキャニングするプロジェクトを展開。詳細なスキャンデータを得るため、計50回に渡り位置を変更しスキャンされたデータは10億ポイントを超える点群データから構成されている。

レーザースキャンイメージ pages.vassar.edu

そして、この高精度なノートルダム大聖堂の3Dスキャンデータが、今回大きな被害を受けたとされる現場の再建に重要な役割を果たす可能性があるとして、大きな注目を集めている。

残念ながらタロン博士自身は2018年11月に亡くなっているが、今回の火災によって消失した尖塔と大聖堂の木造屋根の再建にこのスキャンデータが引用される可能性があり、長年に渡り取り組んだ研究内容に大きな価値があることを改めて証明。

博士のプロジェクトを追ったドキュメンタリー番組「Building the Great Cathedrals」は、過去にエミー賞を受賞している。

世界には、事故や自然災害だけでなく、人為的な破壊行為により失われている文化遺産が多数あり、その保存に3Dスキャンや3Dプリンティング技術を活用する研究が行われている。


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