ギリシャの大学研究チームがABSフィラメントのリサイクル効果を明らかにした
ギリシャの大学 Hellenic Mediterranean University の研究チームは、リサイクルに伴うABSフィラメントの機械的特性の変化を調査し「Sustainable Additive Manufacturing」と題した論文を発表した。
研究チームは、熱力学的処理に焦点を当てたリサイクルプロセスの実験的シミュレーションを行い、FFF方式プリント部品の機械的テストを繰り返し実施。その結果、プロセスの各段階で、リサイクルを繰り返した場合の効果を定量化することができた。
最も一般的な3Dプリント方式であるFFF(FDM)システムで使用されている熱可塑性フィラメントは、環境や人体に有害な影響を与える可能性があるとされている。PLAに次いで使用される頻度の高いABSもその材料の1つで、3DプリントされたABS部品をリサイクルして再利用することで、持続可能性を高めることが求められている。
これまでにも、3Dプリンティングポリマーのリサイクル性に焦点を当てた研究はくつか実施されているが、この研究でテストされた方法の1つは、ポリマーマトリックスに天然の生分解性材料を混ぜることで、無駄になるポリマーの量を効果的に減らすことが挙げられている。しかし、1つの共通したテーマとして、機械的特性がリサイクル数が増えるにつれて劣化する傾向があるということにある。このため研究チームは、再利用サイクルの回数と望ましい機械的特性を維持するための「スイートスポット」を追求。
このスイートスポットを念頭に置いて研究者等は、ABSの微粉末を直径1.75mmのフィラメントに引き込み、Flashforge の3Dプリンタ「Inventor」を使用して一連のテストサンプルを3Dプリント。最初のサンプルで、引張、圧縮、屈曲、衝撃靭性、硬さのテストを行い、その結果を記録。残されたフィラメントは、粉砕機を使用して合計6回リサイクルされ、各段階における機械的特性をモニタリングした。
興味深いことに研究者等は、リサイクルの第5段階まで、機械的特性が約30%改善することを発見。最初の数回のポリマー熱サイクルコースでは、マトリックス内のアモルファスポリマーのチェーンリンクが再配置され、分子間の相互作用が増加。これにより、ABSの安定性と全体的な機械的特性が改善された。5サイクル目以降になると化学的劣化が始まり、ポリマー鎖の分解が始まることを発見。ABS鎖の移動性がなくなり、ポリマーのガラス転移温度が上昇する。この結果は、環境面でのメリットだけでなく、ABSリサイクルプロセスに著しいプラスの影響を示す証拠となっている。
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