安価な3Dプリント製水浄化システム

ウエルバ大学の研究者等は3Dプリント製水浄化スパイラルを開発

スペインのウエルバ大学の研究チームは、3Dプリント技術を使用して、飲料水から18種類の消毒副産物(disinfection by-products 以下 DBP)を除去することができるスパイラル構造を開発。

このような化学物質に慢性的にさらされると、がんの脅威を含む健康リスクが高まることが実証されており、研究チームのプロジェクトでは、浄化プロセスをより効率的に行うことで、これら有害な物質を除去することを目指している。この斬新なアプローチは、最も危険な化学物質を特定して分離し、水をより安全に飲むことができるようにするための水処理施設での応用が期待されている。

水の消毒は公衆衛生上不可欠であるが、その過程で有害物質が生成されることがある。これらにはいくつかの処理プロセスの後に形成される、ハロケトン(HK)、トリハロメタン(THM)および窒素消毒副産物(N-DBP)と呼ばれる揮発性の非規制化学物質グループが含まれる。HKsを除去するには様々な方法があるが、1995年に最初の技術が考案されたにもかかわらず、プロセスを合理化するための研究は現在も進行中のままである。例えば、コルドバ大学の研究者は、2015年に汚染された処理水から14種類のHKsを除去する方法を開発し、以前の研究よりも低い検出限界を提供した。ウエルバ大学の研究者によると、このコルドバ大学の方法では、吸収面積が小さいため再現性が悪く、抽出能力が低いなどの欠点があったという。そこでウエルバの研究チームは、代わりに中空糸液相マイクロエクストラクション(hollow-fibre liquid phase microextraction 以下 HF-LPME)と呼ばれる既存の技術を利用することにした。

研究チームは、3Dプリント技術を使って必要な部品類を作製することで、以前の方法よりも操作が簡単で堅牢な、低コストのデバイスを入手できるようになったという。さらにこの構造物は、抽出のためのより高い表面積を表示し、使い捨て繊維の性質は、クロスコンタミネーションやキャリーオーバー効果のリスクを低減した。また、アッセンブリーの小型化や商業用プロトタイプの製作が難しいなど、これまでのプロジェクトで指摘されていた欠点を克服することも可能となった。

CAMソフトウェアを使用して設計したこのデバイスは、ポリプロピレン中空繊維材料を使用して、オープンソースの3Dプリンタ「Prusa i3」で3Dプリントされ、600μmの内径、200μmの壁厚、0.2μmの細孔を備えている。キャップセプタム、セプタム、ストッパーピース、中空ファイバーポジショナーとクロージャピースの5つのピースで構成されたデバイスは、すべてのコンポーネントを貫通する注射器の針によって接続される。

これらの部品が組み合わされると、デバイスの中空ファイバーポジショナーが、アクセプターフェーズに入り、20μLのオクタノールを2分間塗布して細孔を開け、より柔軟にする。次に、硫酸ナトリウムとpH調整水の混合物を、DBPの抽出効率を高めるため、20mlのサンプル飲料水に導入する。

目的の化学物質の抽出には、溶液を45℃に加熱しながら30分かけて行われた。揮発性の分析物をドナー相(液体)からアクセプター相(気体)に移動させるため、CO2ガスの泡の形でプロセスに熱膨張が適用された。これにより、低温では揮発性化合物のみが回収可能となり、サンプルの水が加熱されるのを防ぎ、選択性を高めることができるようになる。さらに気泡の形成によって液体中に生じる乱流が自然な撹拌を可能にし、抽出時間を最小限に抑えている。

この3Dプリント製デバイスは、そのシンプルな繊維の取り扱い、再現性、抽出効率が他のニードルベースの技術に比べて重要な改善点となっており、このプロセスにとって最も重要なものとなっている。またこの構造により、サンプル量が少なくても繊維表面を増やすことができ、抽出が大幅に容易になった。


浄化装置のテストに使用した配水システムのサンプリングポイントと特性

試験結果は、10~35 THMsおよび10~16 HKsと、世界保健機関(WHO)が安全な飲料水として推奨する80~100μgおよび20~70μgの範囲内で検出限界を示した。この方法の適用性は、6つの地域の配水システムで評価された。貯水池のTHM濃度は、その水源プラントの処理水よりも高かったが、研究チームは、これは配水システムに沿って分解される可能性があるためであることを示唆している。

ウエルバの研究者たちは、この方法は既存の浄化作業を容易にすることができると考えており、将来的にはより小型化された装置を使用して、さらなる調査の機会を増やすことができると考えている。


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