- 2021-8-27
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阪大などの研究チームは培養肉で和牛肉を再現できる「3Dプリント金太郎飴技術」を開発
大阪大学、凸版印刷、弘前大学、大阪工業大学、キリンホールディングス、科学技術振興機構から構成された研究チームは、和牛肉のようなサシ(赤身肉との間に入った網目状の白い脂肪)が入った複雑な組織構造を再現可能な3Dプリント技術を開発。筋、脂肪、血管の線維組織で構成された和牛培養肉を金太郎飴のように束ねてつくることから「3Dプリント金太郎飴技術」と名付けられた。
従来の培養肉は、そのほとんどが筋線維のみで構成されるミンチ肉であり、牛肉などの複雑な組織構造を再現することは困難とされてきた。大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授等の研究グループは、筋、脂肪、血管といった異なる線維組織を3Dプリンタで作製し、それを金太郎飴のように統合して肉の複雑な構造を再現する「3Dプリント金太郎飴技術」を開発。これにより、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現することに成功した。
世界の食肉消費量は1960年代から70%増加し、総生産量は同期間で5倍にまで達している。世界人工の爆発的な増加に伴いこの成長は今後も続くと予想されており、タンパク質の需要と供給のバランスが大きく崩れることが考えられている。
研究チームはこの研究の背景として次のように述べている「世界の人口は2050年には、97億人に達すると予想されており、人口増加や食生活の向上が、タンパク質の需要と供給のバランスが崩れるタンパク質危機(プロテインクライシス)を引き起こすとの予測があります。そこで、代替タンパク質として植物由来タンパク質と共に期待されているのが培養肉です。培養肉は、動物から取り出した少量の細胞を培養により人工的に増やしてつくられる肉です。2013年頃から研究が本格化してきました。今では、大学の基礎研究だけでなく、実用化に向けて世界中で様々なベンチャー企業が設立されています。しかし、これまで報告されている培養肉のほとんどは筋線維のみで構成されるミンチ様の肉であり、肉の複雑な組織構造、例えば和牛の“サシ”などを再現することは困難でした。」
また、多くの専門家が「このままでは食肉消費用に飼育されている家畜による環境への影響が拡大し、大きな負担になる。」と警告している。食肉用として飼育されている動物は、米国内で使用される水の半分以上を消費する一方、たった1つのハンバーガーを製造するのに小型車を20マイル運転するのと同等の化石燃料を使用すると言われている。更に豚肉加工工場などでは、12,000人規模の都市と同等の生ごみを排出しているとして、大きな社会問題となっている。昨今多くの企業がこの問題に対応するため、次の10年で肉の生産と消費の方法を変えようと研究をすすめている。その方法のひとつとして注目される代替肉市場では、3Dプリント技術を利用した高品質でオーダーメイド可能な代替肉製品の提供を始めており、今後さらに成長することが予想されている。
関連記事:培養肉を使用した3Dプリントステーキ開発に成功
研究チームは本研究成果が社会に与える影響として「本研究成果により、望みの構造を有する培養肉をテーラーメイドで生産できるようになるため、将来のタンパク質危機に対する解決策のひとつになると考えられます。また、これまでの食肉生産では、大量の穀物や水、広大な放牧地確保のために行われる森林伐採、さらに家畜の糞尿や“ゲップ”などのメタンガスに起因するオゾン層破壊などを懸念する声があり、これらの軽減などにも貢献できます。さらに、牛の成長と比較すると極めて短時間で培養肉が得られるため、より効率的な生産が可能となります。今後、3Dプリント以外の細胞の培養プロセスも含めた自動装置を開発できれば、場所を問わず、より持続可能な培養肉の作製が可能となり、SDGsへの大きな貢献が期待されます。」と述べている。
※ 本研究の詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載されている。
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