3Dプリンティング技術で復元された文化財を展示

法隆寺献納宝物の伎楽面「呉女」・「迦楼羅」を最新の3D技術で復元、東京国立博物館で公開

国立文化財機構 文化財活用センターは、企業や各種団体と連携して、先端的な技術による文化財の複製を製作。今回新たに完成し公開されるのは、東京国立博物館所蔵の法隆寺献納宝物の伎楽面「呉女」・「迦楼羅」(重要文化財)の復元模造2点で、7世紀に作られた原作品で失われてしまった部分を、東京国立博物館による調査・研究に基づき、3Dプリンティング技術など最新の計測技術と松久宗琳佛所の伝統技術を駆使して、約1,400年前に作られた伎楽面の本来の姿を復元。かたちや色など精巧な復元を試みた模造の完成により、鑑賞者がより直感的、かつ体験的に楽しめる機会を提供することとなった。

それぞれの作品は、東京国立博物館総合文化展(呉女:10/8~11/24の金・土、法隆寺宝物館)および御即位記念特別展「正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―」(迦楼羅:11/6~11/24、平成館)で初公開される。

 

法隆寺献納宝物 伎楽面「呉女」・「迦楼羅」の復元模造

左)呉女 376×330mm、右)迦楼羅 371×225mm

  • 制作期間:2018年10月1日(月)~2019年7月18日(木)
  • 制作者:株式会社松久宗琳佛所
  • 制作手法:3Dプリンタにより原型を制作し、これに基づき木材を彫刻
  • 天然顔料により彩色
  • 材質・技法:クスノキ製 彩色、金具は金銅製

学術的考証に基づいた復元模造「呉女」・「迦楼羅」のここに注目

  1. 最先端の計測技術と職人による伝統技法の融合による成果
  2. 原作品の欠損部分について、断片や古写真により形状を復元
  3. 木製の面だけでなく、失われた金具も調査成果に基づきながら再現
  4. 制作当時の華やかな彩色を、調査成果により再現

注目ポイント1:最先端の計測技術と職人による伝統技法の融合

東京国立博物館保存修復課調査分析室がX線CTによる調査で構造と形状の調査を行い、調査データに基づき、樹脂原型を製作。この原型をもとに日本の伝統彫刻に精通した松久宗琳佛所がクスノキ材を彫刻。


CTシステムによる構造と形状の調査

 

注目ポイント2:欠損部分を断片や古写真により復元

今回の復元模造では、欠損箇所の復元も積極的に行った。呉女面については、『法隆寺大鏡』12輯(1934年)掲載の古写真や同時代の絵画・彫刻を参考に額と鼻を再現。迦楼羅面については、明治初年に法隆寺から流出したとみられるトサカ部分断片がドイツ・ミュンヘン五大陸博物館(旧ミュンヘン州立民族学博物館)に所蔵されており、その調査データに基づいて再現。

 

注目ポイント3:失われた金具について、調査成果に基づきながら再現

呉女面の頭部を飾っていた考えられる笄形髪飾りと宝珠形金具を、もともと原品に付属していたものとみられる法隆寺所蔵の金具を調査し、銅にアマルガム鍍金をする古代技術によって再現。迦楼羅面のくちばしにくわえられた珠には、金銅製の環金具が打ち込まれており、ここにもなんらかの装飾があったと考えられる。今回一つの可能性として、同じく献納宝物に伝えらえられる鎖付き金銅鈴を再現し、吊り下げた。

 

注目ポイント4:当時の鮮やかな彩色を調査成果により再現

赤外線撮影に基づき、肉眼ではほとんど見えない墨線を確認。これをもとに迦楼羅面の両耳や顎下の羽毛表現を再現。全体の色調については、原作品の詳細な調査とともに、先行研究による顔料の分析結果を応用し、天然顔料を用いて可能な限り当初の彩色を復元した。

 

法隆寺献納宝物「伎楽面」 原作品と復元模造

【呉女】

呉女は伎楽面のなかで唯一の女性の面。この面の額と頬には花鈿とよばれる花などの文様が描かれている。中国の宮廷女性をモデルとし、高く結い上げられた稚児輪(ちごわ)という髪型がユニークである。復元模造では、古写真の情報や原作品にみられる痕跡から当初の造形を復元し、あわせて、法隆寺に所蔵される金銅製金具を参考に、あでやかな姿を再現した。

重要文化財:伎楽面「呉女」(ぎがくめんごじょ) 原作品

 

伎楽面「呉女」復元模造

【迦楼羅】

迦楼羅はインドの神話に出てくる霊鳥で、龍を食うといわれる。インドの神々が仏教に取り入れられ、その守護神となった。阿修羅などとともに八部衆の1人に数えられる。復元模造では、原作品からは想像しがたい鮮やかな彩色がよみがえった。

重要文化財:伎楽面「迦楼羅」(ぎがくめんかるら) 原作品

 

伎楽面「迦楼羅」復元模造

法隆寺献納宝物「伎楽面」とは

東京国立博物館が所蔵する法隆寺献納宝物は、明治11年に奈良・法隆寺から皇室に献納され、戦後国の所蔵となった300件ほどの文化財であり、これらは正倉院宝物と双璧をなす古代美術のコレクションとして高い評価を受けている。正倉院宝物が8世紀の作品が中心であるのに対して、それよりも一時代古い7世紀の宝物が数多く含まれていることが大きな特色で、この中には飛鳥時代から奈良時代の伎楽面31点も含まれる。
伎楽は、推古天皇20年(612年)に百済国の味摩之(みまし)という人物が日本に伝えたとされている。呉楽(くれのうたまい)とも呼ばれ、中国南方の呉という地域で盛んだったようだが、源流はインド・中央アジアに及ぶ。飛鳥、奈良時代には寺院の法会などで行われ、平安時代には洗練された舞楽に押されて衰退し、その後廃絶した。伎楽面は、大型で頭までおおう点が、舞楽面や能面などと異なる特色で、材質で分けるとクスノキ製、キリ製、乾漆製の3種があり、クスノキ製の仮面は飛鳥時代の作となる。

 

復元模造の展示情報

「呉女」復元模造

  • 東京国立博物館 総合文化展
  • 展示期間:2019年10月8日(火)―11月24日(日)のうち、金・土
  • 会場:法隆寺宝物館 第3室
  • 料金:総合文化展観覧料で観覧可
    ※「呉女」の原作品も上記期間・上記会場において展示

「迦楼羅」復元模造


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