抗菌フィラメントを使った3Dプリントマスク「NanoHack 2.0」

抗菌作用フィラメントを使用した新たな3Dプリントマスクプロジェクト「NanoHack Version 2.0」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは、世界中の病院を医療崩壊に追い込み、各地で医療用マスクである「N95マスク」不足が深刻化。多くの病院で、本来の使用方法(適切な交換頻度)を超えて使用され状況が続いている。

抗菌デバイス用の抗菌ナノ材料を開発するチリの企業 Copper3D は、新型コロナウイルスによる感染拡大防止対策の一環として、深刻化するマスク不足に対応した3Dプリント製抗菌マスクの新バージョン「#HackThePandemic – NanoHack Version 2.0」を発表した。

抗菌3Dプリントマスクのグローバルキャンペーンとしてスタートした「#HackThePandemic」は、世界中の病院で問題となっているN95マスク不足に対応するため、独自の抗菌フィラメントである「PLACTIVE AN1」「MDflex」と3Dプリンタを利用して、個人防護具(PPE)を作製可能にするためのプロジェクトとしてスタートし、マスク製作に必要な3Dプリント用データを無償公開している。

NanoHack 2.0のSTLデータはこちらからダウンロード可能

https://copper3d.com/stl/g_facemask_nanohack.zip
Creative Commons License: “Attribution-NonCommercial 4.0 International (CC BY-NC 4.0)”

 

Copper3Dの抗菌作用フィラメントとは

Copper3Dの抗菌作用フィラメント「PLACTIVE AN1」および「MDflex」は、チリおよびアメリカの2つの微生物学研究所で確認された抗菌特性を有しており、黄色ブドウ球菌(MRSA)および大腸菌(DH5α)を最初の6時間で95%まで低下させ、 その後8~24時間で99.99%を除去することができる。この高度な抗菌特性は、航空宇宙、食品、消費材料、医療などに活用されている。

PLACTIVE AN1の特徴

■ 科学的に検証された抗菌作用は、真菌、ウイルス、細菌、および広範囲の微生物の99.99%以上を排除。
■ 補綴物、手術器具など細菌汚染の危険がある他の医療用途の製造に最適。
■ チリとアメリカの2つの微生物学研究所で確認された抗菌特性。
■ FDA、EUに準拠、REACH準拠、ISO認証。
■ 非毒性で、環境に優しい(生分解性)
■ 以下の指令および規制に準拠
RoHS指令 2011/65 / EC
REACH指令 1907/2006 / EC


抗菌作用フィラメント「PLACTIVE AN1」

※ この3Dプリント製マスクは、医療器具として認可される「N95マスク」の替わりとしての使用に適した物ではなく、不足するマスク問題を補うための最終手段として提案されている。他の3Dプリントデバイス同様、適切に使用するためには、マスクの後処理・洗浄・密封などの工程を必要とする。またこのマスクデータは、オープンソースファイルとして公開されており、デザインの改良が認められているが、通常のPLA、PET-G、TPU等の素材でプリントすることは推奨されていない。

 

オープンソースの3Dプリント製マスク「NanoHack 2.0」の特徴

米国立アレルギー感染症研究所の研究者等が発表した論文によれば、新型コロナウイルスがプラスチックや金属などの表面に着いた場合、最大で3日間も感染力を保持していることが確認されている。
「NanoHack 2.0」は、Copper3Dが開発した特許取得済みの革新的なナノ銅ベースの添加剤を使用した高品質PLA材料「PLACTIVE AN1」と、TPU材料「MDflex」で製造するよう設計されており、モノブロック構造で造られるマスク本体は、抗菌性TPUである「MDflex」から造られたリムで密封され、強固で気密性の高い構造となっている。これは外部環境からのウィルス侵入を最大限に保護するよう工夫された構造で、新たに採用された活性濾過システムは、ナノ銅に埋め込まれた不織布プロピレンの3層を含み、他の濾過材料も収容することができる。

 

銅およびナノ銅は、SARS-CoV4、インフルエンザウイルス5、およびその他の呼吸器系ウイルスの複製および伝播能力を抑制した高い抗菌性(抗ウイルス性および抗菌性)を有しており、銅はSARSのようなウィルスおよびSARS-CoV4、インフルエンザウイルスなどのウイルスを不活化することができる。また、Copper3Dの「PLACTIVE AN1」と「MDflex」は、Copper3Dのテストにおいて、短期間の曝露で黄色ブドウ球菌、大腸菌、リステリア菌などの危険な細菌を除去することが証明されている。

「NanoHack 2.0」マスクを完全な状態で機能させるには、Copper3Dの抗菌作用フィラメントでプリントする必要がある。

NanoHack のろ過システムについて

「NanoHack 2.0」は、活性材料で製造された活性/抗菌3Dプリントフェイスマスクとして考案されており、ナノ銅に埋め込まれたポリプロピレン不織布(3層)のアクティブフィルターを使用して、微生物からの保護効果を高めることができるとしている。本研究によれば、酸化銅を含浸させた不織布フィルターは、表に見られるように呼吸器系ウイルスを含む様々な種類のウイルスの濾過を発生させることができると結論付けている。

NanoHack に関する注意事項

NanoHack の目的は、一般の人に空気中の粒子からある程度の保護を提供し、気道を汚染する可能性のある飛沫の拡散を防ぐことである。

  • このマスクはN95マスクではなくフェイスマスクであり、PPE(個人用防護具)としての機能を完全に保証していない。
  • 医療従事者においては、最後の手段としての使用を推奨。挿管、機械換気、光ファイバー気管支鏡検査などの気道操作はできない。
  • 共有スペースで使用が可能。
  • 最大8時間使用し、1日1回不織布フィルターを交換する。活性フィルターを扱った後は、手を洗い、保健当局が推奨する予防措置に従う。
  • NanoHackは、ポリマーベースのデバイスで、モノブロック構造には「PLACTIVE AN1(PLAベースの材料)」を使用し、外縁には「MDflex(TPUベースの材料)」でプリントすることを推奨。このセットアップにより、良好なシール性を備えた快適なマスクを手にすることができる。
  • モノブロック構造にリムを組み込んだこのソリューションを使用すると適切にフィットする構造を得ることができるが、特に長期間使用する場合は、鼻と頬にシーラントと低刺激性のクッションテープを追加することを推奨する。
  • ゴムバンドをきつく締めたままにしておくと痛みを伴う可能性があるため、注意が必要。
  • NanoHackは、顎の先から眼球面まで、目と目の間を通る水平線、頬骨と頬骨の間の距離(鼻の真上から測った距離)を12cmとして、そのタイプの顔にぴったりフィットするよう設計されている。使用者の顔のサイズに合わない場合は、5%または10%のサイズ変更を推奨する。
洗浄方法と注意事項
  1. 洗浄:石鹸(液体食器用石鹸など)ときれいな水でマスク(本体および付属品)を洗浄する。
  2. すすぎ:きれいな水で完全にすすぐ。
  3. 消毒:洗浄器具を使用して病原体を不活化。プラスチック部分が80℃に耐えられない場合は、化学消毒を使用。国によって消毒方法は異なるが、ここでは、最も入手しやすい化学的殺菌剤とその方法を紹介。
    3-1:アルコールはインフルエンザウイルスに対して有効であり、エチルアルコール(70%)は強力な広域殺菌剤で、一般的にイソプロピルアルコールより優れていると考えられている。アルコールは可燃性であるため、表面の消毒剤としての使用を小さな表面積に制限し、換気の良いスペースでのみ使用を推奨。消毒剤としてアルコールを長期間繰り返し使用すると、ゴムや特定のプラスチックの変色、膨潤、硬化、ひび割れを引き起こす可能性がある。
    3-2:ほとんどの家庭用漂白剤溶液には5%次亜塩素酸ナトリウムが含まれている。表面の消毒には、適切な条件で希釈した次亜塩素酸ナトリウムを使用する。
  4. すすぎ:化学的消毒を使用して場合は、滅菌水またはきれいな水(5分間沸騰させて冷却した水)ですすぐ。水道水や蒸留水には肺炎を引き起こす可能性のある微生物が含まれている可能性があるため、再使用のために化学的に消毒された呼吸器の残留液状の化学消毒剤を洗い流すには、滅菌水を使用することが好ましい。しかし、滅菌水でのすすぎが不可能な場合は、代わりに、水道水またはろ過した水(すなわち、0.2μのフィルターを通過させた水)ですすぐ。浸漬消毒は接触時間30分を目安に行うことを推奨する。
  5. 乾燥:上記手順の後に、アルコールによるすすぎと強制空気乾燥を行う。
  6. 保管:マスク(本体および付属品)は乾燥した後、密閉可能なパッケージで保管。
抗菌作用フィラメントの購入方法

このマスクプリントで使用できる材料(フィラメント)の購入は下記リンクより
抗菌作用フィラメント『PLACTIVE AN1』
抗菌作用柔軟性フィラメント『MD FLEX』


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