慶應大学とオカムラが3Dプリンタ製オフィス家具を発表

慶應義塾大学とオカムラは、脱炭素社会・資源循環型社会への移行を促す 「リープサイクル」コンセプトに基づくオフィス家具デザインを発表

慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボ(以下 ラボ)と、家具・産業用機器製造の大手メーカーであるオカムラは共同で、3Dプリンタで製作するバイオマスプラスチック素材のオフィス家具デザイン「Up-Ring(アップリング)」プロジェクトを推進し、チェアやテーブルのデザインを発表した。

ラボでは、地球環境時代のものづくりの指針として「リープサイクル」と名付けた3Dプリンタを用いた新たな高付加価値リサイクルのコンセプトを提唱。このコンセプトをオフィス家具分野で社会実装するため、オカムラと共同で具体的なオフィス家具のデザインを開発した。
これは、環境省「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」における「バイオポリエチレン家具3Dプリント製造実証事業」および国立研究開発法人科学技術振興機構センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムにおける「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」の研究をもとにした応用研究の成果であり、この研究成果をもとに、オフィス家具デザイン「Up-Ring」プロジェクトとして具体的な製品化に向けて検討を進めている。

「Up-Ring」プロジェクトは、3Dプリンタで製作する環境素材のオフィス家具デザインに関する取り組みで、3Dプリンティング技術、バイオマスの単一材料などの技術利点を最大限生かすことを考えたデザインの研究開発を行っている。
3Dプリンタによる生産は、金型が不要なため生産準備段階での費用削減を図ることができ、製造時の無駄な材料消費、騒音、消費電力を抑え、1台でも生産が可能。材料となるバイオポリエチレンは、サトウキビから作られており、サトウキビは生育の過程でCO2を吸収(固定)するため、石油化学系ポリエチレンに比べてCO2発生量を70%削減し、温暖化防止等に貢献する。バイオポリエチレンの使用については、強度や耐久性などの基本性能を確認し、実用性を明らかにしており、単一材料(モノマテリアル)でつくられるため、粉砕後は再度3Dプリンタで成形することが可能だ。また、非可食成分から製造されるため、食料との競合も発生しづらくなっている。

「Up-Ring(アップリング)」の生産プロセス

バイオポリエチレンを材料とし、3Dプリンタを使ってオフィス家具を生産する「Up-Ring」は、脱炭素社会の実現に向けた新しい生産プロセスのチャレンジとなる。

  • CO2の固定
    家具の材料となるバイオポリエチレンは、サトウキビから作られている。サトウキビなどの植物は再生可能であるとともに生育過程でCO2を吸収固定。化石資源などの枯渇性資源の使用削減と、温室効果ガスの排出抑制効果が期待できる。
  • バイオマスプラスチックへの加工
    サトウキビを発酵させバイオエタノールを作り、脱水、重合することでバイオポリエチレンを製造。バイオポリエチレンは粒状のペレットの状態で保管。
  • ペレット化とフィラーの混合
    バイオポリエチレンを3Dプリンタで成形すると「反り」が発生、層間強度を高め「反り」を抑えるためにフィラーを混合。色の調整は着色したバイオポリエチレンのペレットを攪拌混合し調合する。
  • 3Dプリンタでの生産
    製造に必要な形状データを入力し、ペレット状の材料を3Dプリンタに投入。3Dプリンタ内で加熱された材料が、ノズルから射出されて成形が始まる。ノズルから押し出された材料は、層を何層も重ねて形になる。データ通りに成形するために射出速度と温度を細かく設定。形状が出来上がったら冷却して安定させる。

このチェアの形状は、バランスボールのように座っている人が自ら重心を移動させることで柔軟に姿勢を変化させ、かつ背中や膝の安定性も確保することができる新たな形状を開発し、3Dプリンタによる一体成形での製造を実現した。現在オカムラは「Up-Ring」プロジェクトの具体的な製品化に向けて検討を進めているという。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けする「Newsletter 3DP id.arts」への登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る