大阪大学、ナノ絹糸ベースの3Dバイオプリント技術を開発

大阪大学の研究チームが印刷適性を向上させたナノ絹糸ベースの3Dバイオインクを開発

大阪大学大学院基礎工学研究科 境慎司教授率いる研究チームと、京都府京丹後市の ながすな繭の研究グループは共同で、蚕の繭糸を精練処理して得られる絹糸を機械的処理により、ナノ繊維化したナノ絹糸を、細胞を含むインクに添加することで、細胞の生存を損なわずに3Dプリントの造形性を大きく向上させることができることを、世界で初めて明らかにした。
ソース:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200929_2

生きた細胞を含むインクを使い、立体構造物をプリントする3Dバイオプリンティングでは、細胞の生存を損なわずに、優れた造形を可能とするインクの開発が進められている。そしてこれを達成するため様々な材料が検討されているが、得られる立体構造物は体内へ埋め込んで使用されるため、より安全性の高いインクの開発が求められてきた。蚕の繭糸を精練処理して得られる絹糸は、外科用縫合糸として長期の使用実績があることなどから、近年その安全性などに着目され、縫合糸以外の医療用途に用いる様々な検討が行われている。
共同研究チームは今回、絹糸を機械的な処理によりナノ繊維化したナノ絹糸を、細胞を含んだヒアルロン酸をベースとする溶液に添加したバイオインクを開発。バイオインクは、3Dバイオプリンティングで最も多くの利用されている押し出し式3Dプリンタのインクとして用いられ、その結果、細胞の生存を損なうことなく、立体構造物を良好に造形できるようになることを明らかにした。

またこの素材は、ヒアルロン酸以外にも、アルギン酸やキトサン、ポリビニルアルコールなど、安全性が高いとされる様々な成分とも一緒に使用できるなど、汎用性が高い素材であることも明らかにした。

3Dバイオプリンティングは今後、急速に発展・拡大していくことが予想されており、今回の成果は、同分野の発展に寄与するだけでなく、絹(シルク)の用途・消費拡大にも寄与すると期待されている。

研究成果のポイント

  • 絹独特の光沢と手触りをもつ絹糸をナノサイズに微細化したナノ絹糸を添加することで、3Dバイオプリントの造形性を大きく向上させることに成功。
  • ナノ絹糸の細胞への毒性は確認されず、ヒアルロン酸やゼラチン、キトサンなど様々なインク成分と混合使用が可能。
  • シルクに新たな用途を与える研究成果であり、日本の養蚕・絹産業の復興にも寄与することが期待される。

本研究成果は、オランダ科学誌「Materials Today Bio」に、9月21日に公開された。


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