3Dプリント技術で移植可能な角膜を生成

トルコの研究チームが3Dプリント技術を用いて移植に適した人工角膜の生成に成功

トルコのイスタンブールにある国立大学 マルマラ大学(Marmara University)の研究チームは、3Dプリント技術を用いて本物のような軽度の曲げ特性を持つ人工角膜の開発に成功。「3D printed artificial cornea for corneal stromal transplantation」と題された論文を発表した。

上皮、実質、内皮の三層に分けられる角膜の厚さは、中央部約0.5mm、周辺部では約0.8mmで、角膜の最も外側にある上皮(保護層)が角膜を保護している。しかしこの角膜は、外傷や感染症など様々な理由により、視力を損なう恐れのある角膜障害(失明)を引き起こすことがあり、全世界では1,000万人以上の人が角膜に関連する病気にかかっているとされている。
しかし、人間の体は角膜内皮細胞を自分で修復することができないため、唯一の治療法は、健康な角膜と交換するための角膜移植が必要となる。この手術には、感染症や免疫学的拒絶反応によるリスクがあり、なにより健康な角膜を有するドナーが居ることが前提となる。

3Dプリントされた角膜のイメージ:Marmara University

マルマラ大学の研究チームは、角膜移植に代わる持続可能な方法を見つけることを目的として、キトサンとポリビニルアルコール(PVA)を複合化した樹脂材料を使用して、弾力性、透過性、酸素透過性、表面平滑性に優れた生体適合性の有る角膜用の複合材料を形成。その後研究チームは、3DCADソフトウェア「SolidWorks」を使用して設計したデータからアルミ型を作製。FFF方式の3Dプリント技術を併用し、この金型を使って角膜の形状を完璧に仕上げるためのベースを構築。次に、キトサンの配合割合を調整して、角膜のサンプル構築物のセットを作製することに成功した。


3Dプリントプロセス:Marmara University

厚さ0.4mmの構造物は、走査型電子顕微鏡と紫外線分光光度計で光学特性を測定し、ヒト幹細胞を用いた生体適合性テストを行い、臨床での使用可能性を確認。その結果、PVA/キトサン角膜は、正確な光の屈折のために正しいサイズと形状を保持しており、光透過率はキトサンの含有量を増やすと減少することを確認。引張強度はキトサンの含有量によって低下したが、すべての構造物で眼圧を快適に支えることができることを証明した。

研究チームはこの研究成果をさらに発展させることで、より安全で持続可能な角膜失明症の治療法につながる可能性があると結論づけた。


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