マサチューセッツ大学の研究チームが高密度生産のための新たな3Dプリントプロセスを開発
マサチューセッツ大学ローウェル校の研究チームは、従来のFFF方式3Dプリント技術と射出成形技術を組み合わせた、高密度生産向けのハイブリッド・3Dプリント技術を開発。
「Injection Printing(インジェクション・プリンティング)」と名付けられたこの新しい3Dプリントプロセスは、造形部品の強度と剛性を大幅に向上させながら、生産率を向上させることができる技術として、現在特許を申請している。
汎用的なFFF方式の3Dプリンタから造形される部品は、造形精度も低く、機械的強度も不足しており、一般的に高スループット生産には向いていないとされている。これと対照的に射出成形は、金型の形状に制限があるものの、他に類を見ない機械的特性を持つポリマー部品を大量に生産することができる。今回発表された「インジェクション・プリンティング」による新しい成形プロセスは、このギャップを埋めることを目的としており、両方の技術の強みを活かし優れたハイブリッド部品を形成する。
FFF方式プリントの断面(左)とInjection Printing断面(右) Photo:UMass
このプロセスでは、FFF方式でプリントされた中空シェル部品内に、同じノズルからポリマーを注入することで、部品に100%のインフィルを与えるという非常にシンプルな仕組みとなっている。これには、温度を変化させるホットエンドを利用しており、低い方の温度でシェルをプリントし、高い方の温度でインフィルを注入。高温により熱可塑性プラスチックが液体状態に近くなるため、流量が増加し、より適切な体積充填材が可能となる。
研究チームは、従来のFFF方式の3Dプリント技術と比較した性能テストを実施するため、ABS製の衝撃試験片と引張棒をプリント(および充填)し、3Dプリントされた同等品と比較。インジェクション・プリンティングされた部品は、密度と等方性が高くなり、部品の平均剛性、強度、破壊までのひずみがそれぞれ21%、47%、35%程高くなっていることを確認。
また両方のサンプルセットには同じプリント速度を適用しているが、インジェクション・プリンティングは、標準的なFFF方式よりも約3.2倍高速であることも判明した。
FFF方式衝撃試験片(左)とInjection Printing衝撃試験片(右) Photo:UMass
この研究の詳細は「Injection printing: additive molding via shell material extrusion and filling」と題された論文に掲載されており、研究チームは、機械的特性を有する様々な部品製造に応用できることが期待されるとして、現在特許の承認を待っているところである。
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