味を感知できる3Dプリント合成舌

英国の科学者チームが味覚感知機能を備えた3Dプリント製合成舌を開発

英国ウェスト・ヨークシャー州にある国立大リーズ大学と、世界トップクラスの研究大学エジンバラ大学の研究者等は、食品の味を感知する可能性のある合成舌の3Dプリントに成功した。

他の哺乳類同様、人間の舌は非常に複雑な構造をしており、最適な濡れ性(固体表面に対する液体の親和性)と組み合わされて、食事や会話などの重要な活動を行うことができる。これらの基本的な機能は、舌の背側下部にある「舌乳頭」と呼ばれる微小な凹凸によって構成されており、味覚を司る神経の末端が分布している。研究チームは、ポイント・プロセスベースのモデルを使用して、本物の舌器官と同様の「乳頭(または味蕾)」をシリコーンエラストマーを利用して3Dプリントすることで、ソフト・バイオミメティック・デバイスを生成。

現在の味覚検査方法では実際の舌の表面や潤滑性を模倣することはできないが、3Dプリント技術を用いることで、人間の複雑な舌の構造が、食感感知能力などにどのような影響を与えているかをより正確に理解することができるようになると考えられている。

現在の食品開発プロセスでは、人間の舌(テイスター)に頼ることが基本となるが、これには多くのコストと時間がかかり、主観的な作業になってしまう。また、機械を利用した味覚検査方法では、実際の舌の表面や潤滑性を模倣することはできないなど、課題も多い。そこで研究チームは、人間の口腔内で液体がどのように相互作用するかを決定的に理解する唯一の方法として、バイオ・ミメティックな舌を作製してその性能を分析。これにより、口当たりの良い食品や医薬品を作るのに必要な貴重な情報を得ることができるようになる。

研究チームは、正確な舌を3Dプリントするために15人の健康な成人の口腔乳頭の寸法、密度、分布(粗さを含む)を3Dスキャン。これらの画像情報をもとに、ポアソンポイントプロセス(数学的空間上にランダムに配置された点からなる数学的物体の一種)に基づくランダム化モデルを用いて、乳頭間の空間分布を最適化したマスターモールドを設計。
このマスターモールドの再現に必要な解像度を達成するため、Envision Perfactory P3 Digital Light Processing(DLP)3Dプリントシステムを導入して、柔らかいシリコンエラストマーモデルを作製。様々な特性評価試験を行う前に適切な濡れ性を提供するため「ポリソルベート80(食品や化粧品によく使用される非イオン性界面活性剤および乳化剤)」を様々調合し、舌を模したデバイスに添加。

この一連のテスト結果により研究チームは、3Dプリント技術を用いたシリコンベースのデバイスが、人間の舌の形状を正確に再現できると結論付けた。将来的には、背骨のレプリカを食品や薬物検査の手段として使用したり、様々な器官の機能をより深く理解することができるようになるだろうと考えている。


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