ヘルスケア等に応用可能な3Dプリント用液晶インク

TU/eの研究チームは、医療機器やARディスプレイに応用が期待される3Dプリンタブル液晶インクを開発

アイントホーフェン工科大学(TU/e)の研究チームは、ヘルスケアやAR(拡張現実)ディスプレイ等への応用の可能性がある既存の3Dプリント技術に対応した新しいカラーチェンジ液晶インクを開発。この研究成果は、学術誌「Advanced Materials」に掲載された。

Photo : Eindhoven University of Technology

自然界では、蝶の羽や昆虫の外皮、貝殻の内殻にある真珠層など、見る角度によって色が変わる無機質と有機質の複合物質が含まれており、これらの美しい構造色を有する天然素材を人工的に加工したものが、液晶材料の1つであるコレステリック液晶である。コレステリック液晶は、液晶ディスプレイだけでなく、電気的に透明度を切り替えられるスマートガラスや太陽電池パネルなど、スマート素材としての応用が進んでいる。
しかし、コレステリック液晶は固体構造にするほどの粘性がないため、これまでは3Dプリンタなどの高度な製造プロセスで使用することができず、用途が限られていた。

入射角によって色が異なる液晶インク

これまでのコレステリック液晶インクは、DIW(Direct-Ink-Writing)ではプリントできないため、TU/eの化学工学・化学部門の研究者等は、TNO、DSM、Brightlands Materials Center(DynAMコンソーシアム)、SABICと共同で、DIWに対応した液晶エラストマーベースのインクを開発。DIWに対応した液晶インクは、小さなノズルから層ごとに表面へ吐出する押し出し方式によって表面に3Dプリントすることができる。また、プリント速度を変化させることでナノスケールの分子配列を正確に制御することが可能なため、素材の外観や光の反射特性をより細かくコントロールして、複雑な色のグラデーションを作り出すことができる。
このような特性を有する液晶インクは、新規性、製造の容易さ、加工のしやすさから3Dプリントに適しているという。

Photo : Jeroen Sol photography

現在のところこの液晶インクは、色の変わる蝶型のデモプリントにしか使われていないが、将来的には、視覚的にも色彩的にも着用者と相互作用するウェアラブルバイオセンサーなど、パーソナライズされた医療機器や、AR(拡張現実)ディスプレイの光学構造にも応用できる可能性があるとしている。


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