発がん性物質の暴露を検知する3Dプリントセンサー

がんを誘発する可能性のある除草剤の暴露を検知する3Dプリントセンサー

ワシントン州立大学(WSU)と DL ADV-Tech のエンジニアは、3Dプリント技術を利用して、発がん性リスクの可能性がある除草剤(グリホサート)の暴露を検出する安価なセンサーデバイスキットを開発した。


Photo : Washington State University

3Dプリンタで造られたこのテストキットは、小さな穴の開いた導電性ポリマーナノチューブを3Dプリントしたセンサーデバイスにコーティングし、糖尿病の血糖値モニターのように電流を流してグリホサート濃度を定量化。このセンサーは、生物学的な抗体ではなく人工的な抗体を使用するため、特別な保管場所を必要とせずどこでも簡単に有害な化学物質への曝露を測定することができるだけでなく、3Dプリンタを利用することで小型化と低コスト化を実現している。


3Dプリンタによるマイクロ流体ヘルスセンサーの事例

この3Dプリント製センシングデバイスは、グリホサートを添加したオレンジジュースや米飯を利用したサンプルでテストされ、センサーが除草剤を高い感度と特異性で識別できることを証明した。

本研究の著者であり、WSU機械・材料工学部のYuehe Lin教授は次のように述べている。
「このセンサーは、健康状態のモニタリングを目的として開発を始めましたが、食品の安全性や環境のモニタリングにも利用できます。持ち運びができるように設計し、3Dプリンターを使って小型化したことで、研究室でも現場でもどこでも使えるようにしました。」


WSU YueheLin教授

グリホサートは、米国環境保護庁をはじめとする多くの規制機関で使用が認められており、2020年には「推奨レベルであれば安全に使用できる」という声明を発表している。しかし一方で、一部の団体や研究機関が、グリホサートの健康や環境への影響が懸念されると発表。2015年には、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、グリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある(グループ2A)」と評価。その結果、ベトナム、ドイツ、オランダなどがグリホサート除草剤の使用禁止を発表し、段階的に使用を中止する国や、民間での販売を全面的に禁止する国も出てきている。


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