病気や火傷で傷ついた皮膚を治癒する3Dバイオプリンタ

自身の皮膚細胞を材料に広範囲な全層創傷皮膚の治癒を促進するバイオプリンティングシステム

ウェイクフォレスト大学再生医療研究所(WFIRM)の研究チームは、糖尿病などの病気や怪我、火傷などで大きく損傷した患部に、直接皮膚細胞をプリントすることを可能にしたモバイルスキン3Dバイオプリンティングシステムを開発。Scientific Reportsに研究結果を発表した。

image:WFIRM

このモバイルスキン3Dバイオプリンティングシステムは、損傷した表皮及び真皮層の治癒を促すため、患者自身の無傷の組織サンプルから抽出した細胞を混合したヒドロゲルからなるインクを充填し、ケラチノサイト(表皮角化細胞)と真皮線維芽細胞の主要な皮膚細胞を、直接患者の創傷部にプリントする。
システムには、傷口をスキャンするためのイメージング技術が備えられており、最初に治療の必要な皮膚範囲をスキャン。ソフトウェアは、読み込まれたスキャンデータを元に、細胞を混合したヒドロゲルインクをどの層に送達するかを判断してプリンタに伝達し、正常な皮膚構造および機能の形成を複製し促進する。

携行性に優れたモバイルスキン3Dバイオプリンティングシステムは、ハンドヘルド3D創傷スキャナおよび直径260μmの8個のノズルを含む移動(XYZ)システムを備えたプリントヘッドを搭載しており、それぞれ独立したディスペンスモーターで駆動される。すべてのコンポーネントは、ほとんどのドアを通過し、簡単に手術室へ移動できるよう幅79cm×奥行77cm(127cmまで延長可能)の小さなフレームに取り付けられている。これは、平均的な患者の胴体を覆うのに十分な大きさである。
またこのバイオプリントシステムは、細胞のプリントプロセス中のズレを防ぐため、治療台とプリンタを結合するためのロック機構を備えており、システムが患者の上に配置されると、これらのロック機構によってプリンタが安定する。100µm精度で移動可能なXY軸と、高精度なZ軸の送達システムが、創傷の表面から設定距離を維持しながら患者の身体の曲面合わせ適切に移動し、正確な皮膚細胞プリントを実現する。

創傷スキャニングシステムとカートリッジベースのデリバリーシステムを組み合わせた3Dバイオプリントシステムは、患者自身の細胞を利用し創傷の中心から外側に新しい皮膚を形成するため、従来の皮膚移植のような拒絶反応が起こりにくく、大きな傷や火傷を患う患者をさらに醜くする原因となる痛みを伴う皮膚移植の必要性を排除する可能性を秘めている。
個々の患者に合わせた最適な皮膚の再構築が可能となるこの研究を実用化するため研究チームは、人間による臨床試験の開始を予定している。


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