- 2020-4-8
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3Dプリンタと真空成型機でカスタマイズ可能な個人用防護具(PPE)マスクを迅速に生産
ここ数ヶ月に渡り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策に有効とされる様々な3Dプリントツール(関連記事はこちら)を紹介してきました。とりわけ、サプライチェーンの崩壊により世界的に不足しているPPE(個人保護用防護具)マスク問題は深刻で、3Dプリンタメーカーや個人ユーザーなどが積極的に参画し、3Dプリンタで製作した様々なタイプの3Dプリントマスクをリリースしています。
世界で初めてFDA認証を得た3Dプリントマスク 詳細はこちら
しかし、現在までに公開されている3Dプリント製マスクは、一個当たりの造形に数時間単位の造形時間を要し、仕上げ加工の工数も合わせると、完成までに相当な時間が掛かってしまいます。
そこで今回は、3Dプリンタと真空成型機を使い、短時間で効率的にマスクを生産するプロセスについて、使用する機器の情報を交えて紹介したいと思います。
マスク生産のために用意する物
- 3Dプリンタ:一般的なFFF/FDM方式の3Dプリンタ
- フィラメント:PLA、PETG、ABS等(推奨フィラメント uDiamond PLA)
- 卓上型 真空成型機:Vaquform DT2
- 3Dデータ
マスクのSTLファイル
フィルターアダプタのSTLファイル
スクリューキャップのSTLファイル
CADファイル(Fusion 360、iges、step)
※ 上記データは開発段階のレベルであり、実使用に最適化するため現在弊社にて細部を改良中。
3DPS id.artsから販売中の真空成型機「Vaquform DT2」
成形型を3Dプリント
先ずは、成形に必要な型を3Dプリントします。プリント用のパラメーター(参考値)は以下の通りですが、使用する3Dプリンタやスライスソフトウェアの設定に応じて調整します。
3Dプリント設定情報
- 壁厚:約1.6mm
- 上部レイヤー厚:約1.6mm
- 下部レイヤー厚:0
- インフィル:30%
- インフィルパターン:グリッド
上記条件で3Dプリント中のマスク型
完成した3Dプリント型
真空成型機で一気に成形
完成した3Dプリント型は、弊社で販売中の真空成型機「Vaquform DT2」にセットし成形します。
使用するシートは、1.0 mm厚の「HIPSシート」または「ABSシート」の何れか。成形後の切り取りを容易にする場合は、0.5 mm厚でも問題ありませんが、強度が低下するため用途に応じてシートを選択します。
Vaquform DT2 を使った成形プロセスは以下の通り
- 本体に成形用シートをセット
- シートの種類と厚さを設定(本体のボタンを押すだけ)
- 3Dプリント型を設置し、スタートボタンを押す
- 自動的に加熱開始
- 設定温度に達すると自動的にバキューム(吸引)開始
- ハンドルバーを下げ、5秒程度で成形完了
- 自動的に吸引が終了
- 成形品を取り出す
このように「Vaquform DT2」を使った真空成型は、成形用シートを本体にセットしてスタートボタンを押すだけ。特別な知識を一切必要としないため、誰でも簡単に使用することができます。
真空成型機に並べられた3Dプリント製マスク型
設定は使用するシートの種類と厚さを選択するだけ
「Vaquform DT2」では、標準的なサイズのマスク型であれば最大3個程度まで並べることが可能なため、より多く並べることで生産性が向上します。
成形直後の状態
成形後の作業について
成形を終えたらシートから3Dプリント型を取り出し、カッターやハサミなど使って不要な部分を切り取ります。切削性に優れたHIPSシートの裁断部は、サンドペーパーなどの研磨材を用いて軽く磨けば、肌に触れても問題なく使用できるレベルに短時間で仕上げることが可能です。
成形後は余分な部分をカット
サンドペーパーなどで軽く磨けば裁断部も滑らかに
この一連の工程を繰り返すことで、短時間で複数のマスクを生産することが可能になります。
また今回のプロセスでは、装着時に必要なゴム紐などを通す穴開けを行っていませんが、成形用シートは加工性に優れているため、簡易的な工具だけで簡単に穴あけや切削等の後加工が可能です。
3Dプリンタと真空成型機を使用したこのプロセスは、マスクだけでなく、顔面全体を覆うフェイスシールドやその他の個人用防具(PPE)を、低コストで短時間に効率よく生産することができます。現在様々な医療品が不足する最前線の医療現場では、必要な物をより迅速に供給するシステムが必要とされています。
注意事項
3Dプリントされた型、とくにPLAなど熱に弱い素材で生成された場合、加熱されたシートによって離型が困難になる場合があります。熱に弱い素材を用いてプリントされた型を使用する場合には、ワセリンなどを型に塗布して使用する必要があります。また上述の通り、現在公開中の3Dプリント型は改良が必要なため、弊社でも改良作業を行っています。公開されているCADファイルは、Fusion 360 などの3D CADソフトウェアで自由に改良することが可能です。
一連のプロセスで使用される機器は、弊社オンラインショップ「3DPS id.arts」および「3DFS id.arts」にて販売中。
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