メイン大学(UMaine)が3Dプリントを利用して、アラスカの部族に文化財を返還

メイン大学、3Dプリント技術を利用してアラスカの部族に文化財を返還

米国メイン州の州立大学であるメイン大学(University of Maine)は、3Dプリント技術を活用して、歴史的に重要な文化財をアラスカの部族に返還するプロジェクトを展開している。

メイン大学の研究チームは、アラスカおよびカナダの先住民族であるインディアン部族の一つトリンギット族の所有物であった「トリンギット・フロッグ・クラン」ヘルメットの複製を、3Dスキャンおよび3Dプリント技術を利用して作製し、そのレプリカをハドソン博物館に展示して、オリジナルをアラスカ南部のトリンギット族に返還することを計画している。

3Dスキャナと3Dプリンタは、歴史的に貴重な像や彫刻のレプリカ作製など、古代の遺物や史跡をデジタル化するのに最適であり、世界各地で同様のプロジェクトが展開されている。
例えば、ロンドンを拠点とする文化遺産プロジェクト「Scan the World」では、この技術を活用して世界中の美術品を撮影し、3Dプリントコミュニティ上で自由に利用できるようにしている。他にも、400万点のコレクションを貯蔵する英国の国立博物館 Victoria & Albert Museum のプロジェクトを手がけており、最近では「Google Arts & Culture(Googleのパートナー・ミュージアムが所有する美術品を高画質で鑑賞できるサービス)」と提携して、オープンソースの3Dプリント可能な美術品のコレクションを拡充している。また、テキサス州の化石展示施設 Texas Through Time Museum では、3Dスキャン技術を利用して古代の肉食動物の骨格化石をデジタル保存している。さらにスペインの国立博物館 National Archaeological Museum では、この技術を利用して「San Pedro de la Duenas Arch」のレプリカも作製している。

image : facebook.com@TheHudsonMuseum

本プロジェクトは、トリンギット族の中央評議会が、このヘルメットをはじめとする7つの遺物の返還を要請したことから始まったものであり、メイン大学とハドソン博物館のディレクターであるGretchen Faulkner氏は一族と協力して、1982年にウィリアム・パーマー3世から寄贈されたトリンギット族のカエル型ヘルメットの3Dプリントレプリカ製作をスタート。博物館が展示用のレプリカを保持しながらオリジナルを返還するというプロジェクトに注力している。

チームはまず、ヘルメットを3Dスキャンして細部を調整し、実物大のレプリカを3Dプリントした後、後処理仕上げと塗装を施して、オリジナルと変わらぬ作品に仕上げている。
ハドソン博物館は、近々に3Dプリントされたレプリカヘルメットの制作過程を紹介する臨時展示を行い、その後オリジナルをトリンギット族に返還するとしている。

このヘルメットのレプリカは、この様な用途における3Dプリント造形の可能性を示す試みのひとつであり、メイン大学はこの技術を使用して、リンギット族が返還を要求している他の遺物のレプリカも製作することを計画している。


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