ヒトの筋肉と腱組織を3Dプリント

生きたヒトの筋肉や腱を3Dプリントするクライオバイオプリンティング

米国最古の大学ハーバード大学医学部と、中国四川省成都市に本拠を置く中国の国立大学四川大学の研究チームは、生きたヒトの筋肉と腱の組織を3Dバイオプリントする新しい方法を開発した。


3Dバイオプリントされた筋肉・腱を間近で示す図 image : Harvard Medical School/Sichuan University

従来の3Dバイオプリンティング技術は、 X軸とY軸に沿って細胞を押出し堆積させるため、筋肉や神経線維のように配列に大きく依存する組織のプリントには不十分とされている。 研究チームが開発した「Cryobioprinting(クライオバイオプリンティング)」プロセスは、通常のバイオプリンティングとは異なり、細胞を凍らせて垂直に積み重ね、自立した混合細胞組織を作製する「アイステンプレート(細胞を含むハイドロゲルベースの構造体に、融解後にマイクロチャネルを形成させる凍結プロセス)」に着目。当然ながらこの方法では細胞の生存率が損なわれるため、研究チームは、細胞の凍結保護剤(CPA)であるメレジトースとジメチルスルホキシドを細胞に注入。その後、紫外線を照射してバイオインクを垂直方向に架橋し、骨格筋筋芽細胞やヒト臍帯静脈内皮細胞など、様々な種類の細胞をサポートできる高解像度のハニカム状マイクロチャネルネットワークからなる組織へと押し出した。


クライオバイオプリンティング技術

このアプローチの実行可能性を実証するため科学者達は、同軸ノズルを備えた3Dバイオプリンタを用いて、細胞を垂直なコアシェル構造体に蒸着。この一連のプロセスでは、最大8種類のインクを使用しながら、材料の蒸着を正確に制御することができたという。

研究チームは、このバイオプリンティング技術を用いて、自然の組織構造を模倣した接合部を作製。プリントされた腱は7日間培養され、筋肉と血管のバイオインクが相互に作用し、緻密な微小血管網に成長。この結果に対し研究チームは、筋骨格系モデルの作製に応用できる可能性があり、患者固有の治療法の開発や人体に関する理解の進展に役立つと述べている。


垂直クライオバイオプリンティング後、1日目から7日目までの腱形成を示す蛍光顕微鏡画像

研究チームは論文の中で、「この縦型3D低温バイオプリント法は、細胞内部と細胞外マトリックスの配置を特徴とするさまざまな組織の作製に幅広く利用できることが予想される」と結論付けている。


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