スマートフォンベースの3Dプリンタで薬を作製

スマートフォン用3Dプリンタで、自分に合った薬を作ることが可能に

全英屈指の名門校であるユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)と、世界有数の歴史を有するスペインの大学であるサンティアゴ・デ・コンポステラ大学(USC)、UCLのスピンアウト企業で、医薬品製剤の開発に関する分析等を専門とする FabRx から構成された共同研究チームは、スマートフォンの画面から発せられる光を利用して、個々の健康状態に応じて必要な薬をプリントする新しい3Dプリント技術を開発した。

本研究では、FabRxと共同で開発した「M3DIMAKER LUX」3Dプリンタを使用して、世界で初めてパーソナライズドされたプリントレット(3Dプリントした錠剤)のプリントに成功。このプリントレットは、光反応性の薬液に必要な薬物を溶かし、その薬物を構成するプリントレットの基となる樹脂で患者に適した錠剤を成形する。
医師が服用量を処方した後、患者はその溶液を3Dプリンタの樹脂タンクに注入。モバイルアプリで錠剤の形状をカスタマイズした後、スマートフォンを3Dプリンタに挿入すると画面の光と溶液が反応して、患者個人に適した正しい形状、サイズ、用量の錠剤がプリントされる。

研究チームは、この新しいシステムを一般的なスマートフォン2台でテストし、画面の輝度が最も高い状態で動作するようにプリンタを較正。このプリントレットには、一般的な血液凝固阻止剤であるワルファリンが含まれており、サイズ、投与量、形状が異なる菱形、三角形、四角形、格子形状などの薬剤をプリント。薬が迅速に放出されることを確認した。

その後、血流への吸収性を調べるため、ワルファリンを含むプリントレットを消化管内を模した模型に溶かし、24時間かけて徐々に放出されることを確認。プリントレットの形状や大きさにより、ワルファリンが放出される速度が異なることから、3Dプリント薬品のさらなるカスタマイズが可能であることが示された。この概念実証が将来的に成功し、この技術と材料の安全性が規制当局の承認を得ることになれば、いずれ患者個人が医療用3Dプリンタを自宅に所有し、健康状態に応じて必要な薬をプリントできるようになる可能性がある。
この方法は、遠隔地に住む患者や、設備の整った大きな病院から遠く離れている患者、外出が困難な患者等にとって、特に有益なものになるはずと期待されている。

様々なフレーバー、色および用量で3Dプリントされたプリントレット(Photo : FabRx)


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