- 2021-1-4
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3Dプリンタ材料が人体に有害な可能性のある有毒粒子を放出することを示すレポートを発表
米国の経済雑誌フォーブス(Forbes)は、3Dプリンタ材料が人間に有害な可能性のある有毒粒子を放出することを示したレポートに関する記事を投稿した。
これは、2020年12月15日に開催された「2020年リスク分析仮想年次総会(2020 Society for Risk Analysis virtual Annual Meeting)」で発表された研究結果に基づくもので、3Dプリントプロセス中に放出される粒子が、室内環境や公衆衛生に影響を与える可能性があることを示す研究結果として発表された。
3Dプリンタは、金属や熱可塑性プラスチックなど様々な基材を溶融させ、材料を層ごとに積み重ねてオブジェクトを形成することで動作するが、プラスチックまたは他の基材が加熱され溶融する際、揮発性化合物をプリンタおよびプリントオブジェクト近くの空気中に放出する。プリントプロセス中に放出される化学物質の副産物や微粒子は、プリント時間が延長されるほど空気中に蓄積され、その中には肺に浸潤して人体に障害を引き起こす可能性のある物質も含まれている。
関連記事:3Dプリンタから放出される有毒粒子を特定する研究
今回発表された研究では、様々な種類の排出物とそのリスクについて調査しており、例えば、環境保護庁(EPA)の2つの研究では、フィラメント押出タイプの3Dプリンタ(FDM/FFF方式)からの排出物をシミュレーションモデルを使用して分析し、異なる年齢層が3Dプリンタを使用した場合にどれだけの粒子が生成され、人体のどこに堆積されたかを調べた。この研究の結果、フィラメント押出機からは他の研究で見られたものと同様の量の微粒子と蒸気が放出されていることが確認された。今回使用されたシミュレーションモデルでは、9歳以下の子供の肺への表面積あたりの粒子質量の沈着量が高いことが予測されていたが、吸入された物質量がどの程度になるかを決定するためには、さらなる研究が必要であるとしている。
国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health)のYong Qian氏が行ったもう一つの研究では、3Dプリント時に発生するアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS樹脂)の排出物の潜在的な毒性について、人間の肺細胞とラットの吸入による暴露を調べた。その結果、放出された粒子はヒトの肺細胞で中程度の毒性を示し、ラットでは最小限の毒性を示すことを明らかにした。
今回発表されたこれらの研究はまだ初期段階ではあるが、昨年発表された別の研究では、ABSとポリ乳酸(PLA)粒子の両方が細胞の生存率に悪影響を与え、PLAの方がより毒性の高い反応を促すことが分かっている。この試験においても、長期間フィラメント粒子へ暴露することは、自動車や他の排出物で汚染された都市環境の空気と同等に有毒である可能性があることを示している。
また、これまでに発表された同様の研究と同じく、フィラメントは溶融温度が高くなるほど排出物が多くなる。ABSフィラメント使用時に3Dプリンタから排出されるABS粒子は、ABSとは異なる化学的特性を有しているが、フィラメントメーカーは特定の性能を有するフィラメントを製造する際に使用する様々な化合物が何であるかをほとんど公表していない。
関連記事:3Dプリント中のノズル温度変化による有害物質放出率を調査
更に、デューク大学のジョアナ・マリー・サイプ氏が行った別の研究では、3Dプリンタで作られたプラスチック製品も環境に有害であることを示している。
サイプ氏は、水筒のような3Dプリント製プラスチック製品が、使用中または投棄された際にどれだけ分解されるかを測定できる機械を開発。プラスチックやナノ粒子を魚に食べさせ、それらが内臓に及ぼす影響を観察。研究チームは、魚が食べたプラスチック製品を噛んだ時や分解したときに放出される物質の量を調べたデータを利用して、プラスチックやナノ材料を充填した製品が、環境や人体にどれだけの影響があるかを研究している。
これまでのところ、一般ユーザーの多くは3Dプリンタの排出物へ暴露する可能性について殆ど認識していないが、家庭や学校など、感受性の高い子供達が多くの時間を過ごす場所において3Dプリンタの利用率が高まるなか、十分な注意が必要とされている。
3Dプリンタを使用する上で重要となる項目
- 換気の良い場所で3Dプリンタを操作する
- フィラメント(材料)の推奨温度範囲の下限値でノズル温度を設定する
- 稼働中の3Dプリンタからは離れる
- 有害物質の排出量が少ないことがテストおよび照明された高性能なフィラメントを使用する
3Dプリント技術は、新型コロナウィルス(Covid-19)に対応した人工呼吸器、フェイスシールド、マスク、その他の個人用保護具の製造でも活用されているように、多くの製品をより容易に、より安価に入手できるシステムとして活用の場が広がっている。上述した潜在的なリスクを考慮することはとても重要であり、3Dプリント技術がより広く普及するにつれ、規制当局、製造業者、ユーザー等がこれらのリスクを適切に管理することに注意を向ける必要がある。
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