3Dプリント技術が新型コロナウィルス患者の命を救う

新型コロナウイルスで混乱する病院で3Dプリンタを使用して蘇生装置用バルブを作製

世界各地で感染が拡大し、大きな混乱を引き起こしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。WHO(世界保健機構)のテドロス・アダムノ事務局長は、3月11日にスイスのジュネーブ本部で記者会見を開き「新型コロナウイルスは、パンデミックとみなすことができる」と述べ、世界的な大流行に発展しているとの認識を示した。


ブレシアの病院に設置された感染者施設 Flavio Lo Scalzo – REUTERS

各国政府の発表(2020年3月16日現在)によれば、世界全体の感染者数は165,072人(死者数 6,472人)で、国や地域別感染者数および死者数は次のように順位付けられている。

  • 中国:8万860人(死者数 3213人)
  • イタリア:2万4747人(死者数 1809人)
  • イラン:1万3938人(死者数 724人)
  • 韓国:8236人(死者数 75人)
  • スペイン:7753人(死者数 288人)
  • フランス:5923人(死者数 126人)

中国に次ぐ感染者数に達したイタリアでは、医療機関の崩壊を招くほど大きく混乱。新型コロナウイルス感染で被害の大きな地域の1つブレシアの病院では、集中治療室で使用される蘇生装置用のバルブ(写真)が不足する事態に直面。従来の方法で部品の調達を行っても、非常事態宣言によりサプライチェーンが崩壊しつつあるイタリア国内では、急を要する医療用資材の調達が難しくなっている。


オリジナル(左)と3Dプリントされたバルブ(右)

3月13日、ミラノにあるFabLab創設者Massimo Temporelli氏は、地元新聞 Giornale di Brescia の記者からの連絡を受け、ブレシアのFabLab施設の創設者でAMソリューションを研究するイタリア企業 Isinnova のCEOと協力し、わずか数時間で必要な部品(バルブ)を再設計。現場に持ち込まれた3Dプリンタを利用して、再設計データから即座に3Dプリンタバルブを作製。依頼を受けたその翌日には、10人の患者が3Dプリントされたバルブを取り付けた呼吸器を使用して治療を受けた。

バルブは当初、FFF/FDM方式の3Dプリンタを使用して作製されたが、その後地元ブレシアにある機械加工製造メーカー Lonati SpA の協力を得て、同社が所有する3DSystemsのSLS方式3Dプリンタ「ProX SLS 6100(DuraForm材料)」を使用して大量に生産。部品を必要とする医療機関へ分配される。


Photo:Lonati

サプライチェーンが崩壊するなか、即応性、カスタマイズ性に優れた3Dプリント技術は、通常のサプライヤから入手できない部品などを迅速に調達することが可能なため、混乱する最前線の医療現場でも活躍が期待できる。


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