シルクをベースとした革のような3Dプリント材料

タフツ大学の研究者チームがシルクで作られた革のような3Dプリント素材を開発

米国マサチューセッツ州の私立大学タフツ大学の研究チームは、シルクをベースとした皮革のような3Dプリント用素材を開発。この素材は完全にリサイクル可能な生分解性が特徴としながら、本革に匹敵する機械的特性を備えている。

皮革は、ファッションや装飾品では定番の素材であり耐久性と柔軟性が特徴的で、一般的には牛や豚などの動物の皮膚をなめして作られている。古代から利用されてきた皮革だが、牧畜における牛は、二酸化炭素の80倍以上の温暖化力を持つメタンを大量に発生させるため、それが温暖化の原因のひとつとされており、大量殺戮を含め多くの社会的問題を抱えている。
更に、革を加工する際には多くの化学薬品が使用されており、日焼け防止剤には、クロム塩、ホルムアルデヒド、動植物に有害な影響を及ぼす可能性のある様々な重油などが含まれている。

そこでタフツ大学の研究チームは環境に配慮した代替品として、シルクをベースに加工し、より強くより耐久性のある物として、特注の空気圧式押し出し3Dプリンタに対応させる素材とプロント方法を開発。システムには3軸CNCガントリー、1m×1mのプリントベッド、ノードソンEFD ValveMateディスペンシングバルブコントローラーが搭載されている。
配合方法として、蚕の繭から採取した絹繊維をスラリー状にして混ぜ合わせ、この繊維をタンパク質に分解した後、可塑剤と植物性ゴムの増粘剤を混ぜることで、3Dプリントに必要な押し出しやすさを実現。さらに、軟体動物の外骨格の強さの基となっている糖質「キトサン」を下地に加えることで、素材の強度を高めている。このプロセスは害の少ない化学薬品のみを使用しており、標準的な実験室環境で使用することができる。

発表された研究成果によればこの皮革のような素材は、0.25mmから5mmの範囲で様々な形状の3Dプリントが可能で、工夫次第で柔軟性や不透明度を変えて蒸着することもできるという。この特徴を活かし、様々なファッションへの応用が期待でき、耐用年数が過ぎた後は再生して再利用が可能で、完全に生分解性であるため環境へ負担を掛けずに廃棄することもできる。

本研究の共著者であるFiorenzo Omenetto氏は「私たちの研究は、現在一般的に広く使用されている製品の代替品を提供するため、材料の性能を維持しながら有害化学物質の使用を最小限に抑える天然由来の材料の使用に焦点を当てています。シルクだけでなく、繊維くずや農業廃棄物からのセルロース、貝類廃棄物からのキトサン、そしてそれらを結合するために使用される比較的穏やかな化学物質をすべて使用することで、目標に向かって前進しています。」と説明している。


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