慶応大学は目的に合わせて自由にカスタマイズできるIoTデバイス製造装置「FABRICATOR」の開発に成功
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の相部範之特任准教授らは、卓上でIoTデバイスを一個から製造可能な装置「FABRICATOR」の開発に成功した。
「FABRICATOR」は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援によって行われている『感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点』プロジェクト「プロセス&テクノロジー」グループ(グループリーダー:田中浩也(同大学環境情報学部教授))の研究の一部として開発されたものだ。
卓上複合製造装置「FABRICATOR」のポイント
- IoTデバイスに欠かせない電子回路の製造のための複数のプロセスと、3Dプリンティングによる外装のパッケージングを一つの装置に統合し、卓上でIoTデバイスを一個からでも自動的に製造できるコンパクトな装置を開発。
- 従来、電子回路の製造において、複数のプロセスを連結させる場合、異なる機械を並べ、その間に搬送機構を設ける必要があり、大きな空間を必要とした。それに対して、特許出願済みの新しい搬送機構は、同様のプロセスを卓上でコンパクトに実現することを可能にした。
- 6つの異なるプロセスをユーザーが自由にカスタマイズして使うことができる仕様にもなっており、IoTデバイスの製造以外にも、異なる方式の3Dプリンティング、さらには細胞プリントや化学反応プロセス、フードプリンティング分野の研究等にも活用できる。
IoT デバイスの製造には、基板製造、ハンダ塗布、部品搭載、リフローといった複数のプロセスを必要とするが、FABRICATORは一台の装置で、ハンダ塗布からリフローまでの複数のプロセス
を実行できる。さらに3Dプリンタで外装のパッケージングを行うことで、IoT デバイスを一個からでも製造できる。
従来、複数のプロセスを連結させるには、異なる機械を並べて、その間に搬送機構を設ける必要があり、大きな空間を占める上、プロセスの組み換えに手間がかかっていた。これに対しFABRICATORは、特許出願済みの「回転切り替え式ヘッド」と「逆さデルタ式ステージ」を組み合わせた新しい搬送機構により、卓上でコンパクトに製造することが可能となった。
また、部品搭載機能などで使用するFPGAによる画像認識技術については、共同研究先である筑波大学安永守利研究室の成果が使用されている。
田中教授らのグループは、3Dプリンタにおける「デルタ(パラレルリンク機構)式」の有効性に着目した研究を行い、今回の「FABRICATOR」は卓上サイズにおける完成形と言える。
JSTのCOIプログラムの支援によって行われている『感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点』プロジェクトは、プロジェクトリーダーを松原健二(株
式会社ロングフェロー代表取締役社長)、研究リーダーを村井純(慶應義塾大学環境情報学部教授)として、2013 年に開始され今年で6年目を迎える。これまでの研究成果の一部として、試作に
必要となる機構図面、回路図、およびファームウェアの全てを公開する予定である。
また、2018年8月30日(木)~31 日(金)に東京ビッグサイトで開催される「JST フェア 2018」にこの装置を展示し、製品化に関心のある企業と連携を進めたいと考えている。
「JST フェア 2018 ~科学技術による未来の産業創造展~」
会期:2018年8月30日(木)10:00~17:30 および 8月31日(金)10:00~17:00
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)西3ホール
入場料:無料
公式サイト:https://www.jst.go.jp/tt/jstfair2018/index.html
FABRICATORについてのお問合せ先
慶應義塾大学 SFC 研究所 ファブ地球社会コンソーシアム事務局
fabearth@sfc.keio.ac.jp
プレスリリース
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