木登りするように無限に造形し続ける3Dプリントシステム

チリ大学の研究チームが無限にプリント領域を拡張できる3Dプリントシステムを開発

チリ最大かつ最古の高等教育機関で、チリのサンティアゴにある大学 チリ大学 の研究チームは、プリンタ本体よりも大きなオブジェクトを無限に造形し続ける能力を備えた3Dプリントシステムに関する論文を発表。研究者チームはこの論文において、柱や彫像を用いたテスト結果を基に、3Dプリントシステムの設計、構築、特性評価について説明した。

「Koala 3D」と名付けられたこの3Dプリントシステムは、クライミングロボットと3Dプリンタを組み合わせた物で、木にしがみつくコアラのように、プリント実行中のオブジェクトにしがみつきながら移動し、無限に3Dプリントを実行することができる。

筐体内に一定の造形エリアを有する通常の3Dプリントシステムは、それ自体を超えるサイズの造形はできないが「Koala 3D」の場合、本体が自由に移動することが可能なため、3Dプリンタ自体よりも大きなオブジェクトを構築することができる。

この3Dプリントシステムは、ヘッダー部分とクライミング部分を中心とした2つのコンポーネントから構成され、下部のクランプ機構はプリンタ本体の下部にあり、上部のクランプ機構はプリンタの下部と上部の間を自由に移動することができるよう設計されている。一方のクランプは、常時梁に固定させたままとし、もう一方のクランプが新たな固定ポイントを見つけて移動するため「プリント→再アンカリング→プリント→再アンカリング」のプロセスを繰り返して拡大を続けるという。

研究チームは、一般的な3Dプリンタと比較してより堅牢な位置決めシステムの設計に着手。このステージでは、X-Y平面で45mm×45mmの押出機の動作範囲をカバーするように設計され、この動作範囲内で30mm×30mmの断面積を持つ垂直の梁を生成することを目的としている。
チームはシステムを設計した後、評価のために多くの実験やテストを行い「プリント→再アンカリング→プリント→再アンカリング」プロセスを用いて3Dプリントが可能であることを実証。彼らはこのクライミングシステムを使い、350mmから850mmまでの様々なサイズの11本のサンプル梁や、さらに小さな部品を3Dプリントすることに成功した。

実証実験を成功させた研究者等は、建設および製品開発業界における潜在的な将来の研究とアプリケーションおよび「Koala 3D」クライミングプリンタの開発時に遭遇した3つの問題について
「問題は(1)再固定後の機械の落下、(2)高アスペクト比での構造振動、(3)パーツとベースの初期位置合わせです。これらの問題を解決することは、自分たちが造る構造物と同じ構造物に沿って登れる自律型の機械を開発する上で重要になるでしょう」と述べている。

建設業界では最近、さまざまなプロジェクトで3Dプリント技術を採用するケースが増えいるが、このようなプロジェクトでは通常、3Dプリントされるオブジェクトをマシン構造自体よりも小さくする必要があり、設計の自由度が制限される。また、特定の場所から別の場所に大型機器を移動する必要があるという多くのロジスティクスなの問題が生じるが、チリ大学の研究チームが提案するこの3Dプリントシステムは、より大規模な3プリント建設プロジェクトが抱える多くの問題を緩和する可能性を秘めている。


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