海洋堂、14台の「Form 2」で3Dプリント工場を構築

海洋堂14台のForm 2を利用した3Dプリント工場を社内に構築、短期間で自社製品開発を実現

米国マサチューセッツ州に本社を置くプロフェッショナル向け3Dプリントシステムを提供する Formlabs は、模型製作大手の海洋堂が「ガレージキット(合成樹脂を使った少量生産向きの成形方法を採用した組み立て式の模型)」を3Dプリントで自社生産する工場を立ち上げるため、Formlabsの光造形(SLA)方式3Dプリンタ「Form 2」14台を導入。リードタイムを1/10以下に短縮し、トレンドに合わせた素早い製品投入を実現していることを発表した。

フィギュアの開発は、造形作家が粘土やプラスチックパテなどを使い原型と呼ばれる立体像を制作した後、社外(主に海外)工場に金型を発注し量産するというプロセスが一般的だが、今回発表された海洋堂の場合、原型の制作から量産、販売開始までに平均で約1年を要し、短期間でいち早く市場投入することが難しいことが課題だった。そんな中、2019年に大ヒットを記録した映画「カメラを止めるな」のガレージキット製造に「Form 2」を導入したことで、わずか1ヶ月という今までの1/10以下での製品化を実現した。

海洋堂では2018年に「Form 2」を2台導入し、ごく少量のみ生産する高価格帯商品のパーツ製造に3Dプリントを導入していたことに加え、原型制作の過程の中でも3Dプリントを活用していた。
「カメラを止めるな」のガレージキットの製造にあたって新たに導入した8台の「Form 2」で生産、DGK(デジタルガレージキット)シリーズとして、2019年2月のワンダーフェスティバルで先行販売を開始。日本アカデミー賞で「カメラを止めるな」が8部門ノミネート、2部門受賞したタイミングにあわせて市場投入したこともあって大きな話題を集めた。


海洋堂の大阪本社内にある3Dプリント工場。現在14台の「Form 2」が常時稼働

 

海洋堂では初となる3Dプリンタによる製造に「Form 2」に採用したポイント

  • 出力が安定していて、生産計画の策定が容易
    レジンを適切かつ自動的に撹拌するワイパーや、レジンを最適な温度に保つ自動加熱式レジンタンクによって安定した出力が可能。さらに、レジンの自動充填システムが手動でのレジン補充を不要に。造形の失敗が少なく、計画通りの生産が可能。
  • データ読み込みから造形に至るまで、優れた使い勝手
    日本語にも対応した3D プリントソフトウェア「PreForm」は、3D モデルを最適なプリント位置に自動配置する機能や、サポート材の自動生成機能などを備え、出力の準備が容易。複数台での同時運用でも、準備や設定に手間取ることなく造形可能。
  • ハイクオリティな製品を求める購入者をも納得させる品質
    高精細な光学機構を搭載するため、造型物の表面は滑らかで美しく、細部の表現力を求めるフィギュアにも十分な品質。レジンは加工性に優れており、表面処理や細かい修正のための時間や手間が格段に少ない。


左:ガラモン 塗装後、右 Form 2出力品(未塗装)

海洋堂の代表取締役社長 宮脇修一氏は、今回の発表について次のようにコメントしている。
「Form 2で出力したガラモンの仕上がりを見て、これなら勝てると確信した。毎日の生産量とイニシャルコスト、ランニングコストを計算しても、少量生産であれば大きなリスクもなく安定した品質で生産できる目論見はあったので、迷いはありませんでした。アナログではできない重力を無視したような原型制作も可能で、この先はアナログでできなかったことがデジタルによって実現できる段階に来ていると言える。粘土による原型制作から金型による量産という従来型の製造プロセスの利点と、3Dによる原型データ制作から3Dプリンタによる製造という新たな手法の利点を共存させることでフィギュア界に新たなイノベーションが起きることを期待している」

ユーザーサミット開催

Formlabsは「Form 3」および「Form 3L」のリリースを記念し、2019年9月13日にベルサール東京日本橋にて「Formlabs USER SUMMIT JAPAN 2019」を開催する。


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