MITがリアルな光沢感を再現する3Dプリント技術を開発

MITの研究者等は視覚的に完璧な光沢感を有する3Dプリンティング技術を開発

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者マイケル・フォッシー氏率いる研究チームは、市販のニスを使用して、リアルに変化する光沢パターンを有するオブジェクトを生成する3Dプリントシステムを開発した。


左)反射率が変化しない従来の3Dプリント品、右)ハーフトーン技術が適用された3Dプリント品(Photo : MIT)

MITの研究者でありエンジニアであるマイケル氏は、イタリアのSvizzera大学マックスプランク情報学研究所プリンストン大学の同僚等と協力して「視覚的に完璧な」光沢表現が可能な3Dプリント技術を開発。このプリントプロセスは、3Dプリントされた造形物表面の光沢度をリアルに再現するためのもので、美術館などに展示される美術品のレプリカや、よりリアルに見える義肢装具の作製が可能となる。


左)反射率が変化しない従来の3Dプリント品、右)ハーフトーン技術が適用された3Dプリント品(Photo : MIT)

光沢度とは、物体表面の物理的性質であり「つや」または「光沢感」などと呼ばれる光の反射率のことであり、光沢度の高い表面は反射性が高く、逆に光沢の低い表面やマットな表面には反射性が少ない。光沢のあるワニス(ニス)は、マットなワニスに比べて粘度が低く、乾燥すると表面が滑らかになる。一方、大きなポリマー粒子を含むマットワニスは、3Dプリンタの細いノズルを詰まらせる原因となる可能性がある。
パデュー大学はこれまでに、ハーフトーニング(少ない階調で表現する方法)が、3Dプリント部品の表面品質や色をどのように改善するかについてを研究するため、HPのマルチジェットフュージョン技術をベースに、個々のボクセルを最適化することに焦点を当てたハーフトーニングアルゴリズムを研究している。また、ドイツのポストプロダクションソリューションプロバイダーである DyeMansion は、表面の粒子を溶解する溶剤を塗布することで、3Dプリント部品に光沢のある仕上がりを与える「VaporFuse Surfacing(VFS)」と呼ばれる技術を、2018年に発表している。


ハーフトーンパターンを作製するソフトウェアアルゴリズムを含む3Dプリンタ

今回発表されたMITの手法は、初めに高光沢の物体を3Dプリントして、マットな仕上がりにしたい部分をサポートで覆い、その後、最終的な表面の必要な粗さを達成するためサポートを除去する。これを行うため研究者等は、高粘度で粒子径の大きなワニスを様々なサイズの液滴で堆積させることができる大きなノズルを備えた3Dプリンタを設計。ワニスは加圧されたタンクに貯められ、ニードルバルブの開閉によりプリント面に放出される。このニードルバルブの圧力と速度を変えることで、液滴の大きさを制御。ワニスの吐出量が多いほど液滴が大きくなる。
研究者等はリアルに変化する光沢感を実現するため、個別のワニスの液滴を配置するハーフトーン技術を使用。次に、チームが開発したソフトウェアパイプラインによって予めプログラムされたハーフトーンパターンに、光沢のあるワニス、マットなワニス、中間のワニスを統合して、任意に選択されたパターンから、物体の表面にリアルに変化する光沢の濃淡を連続的にプリントする。

研究チームは、将来的にこの技術を市販の3Dプリンタと統合することも視野に入れており、完全な3Dオブジェクトを造るためこの技術の開発を続けていくことを計画している。
尚、本研究の詳細は、来月開催される「SIGGRAPH Asia」カンファレンスで発表される「Towards spatially varying gloss reproduction for 3D printing」と題した論文に掲載されている。


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