- 2017-12-22
- 実機レポート, 最新情報
- 3DCG, 3DPrinting, 3Dプリンティング, 3Dモデリング, 3M, FDM, FFF, filament, Ultimaker, Ultimaker 3, デザイン, フィラメント, モックアップ, 工業デザイン, 工業製品, 試作
Ultimaker 3 Extendedの実機検証を兼ねた製品開発時のモックアップ事例紹介
id.artsではこれまで、3Dプリント技術を利用した様々な事例記事をアップしてきましたが、今回取り上げた事例では、弊社の通常業務の一つである「製品デザイン・開発」におけるラピッドプロトタイピング(3Dプリンタなどを用いた迅速な試作手法)について、2つの素材を元に紹介します。
また今回の記事では、最近新たに導入したばかりの「Ultimaker 3 Extended」をベースに、同機の使い方やその特徴なども含めてご紹介しています。Ultimakerシリーズの導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
Ultimaker 3 Extended 選択の理由
id.artsでは、造形方式や仕様の異なる複数の3Dプリンタを所有し、用途に応じた使い分けをおこなっていますが、今回紹介する2つの事例は何れも、広めの造形領域と複数の材料を必要とする制作物となるため、200mmを超える広い造形領域(詳細スペック下記参照)と、PLAやABSなど汎用素材の他、TPUやPVA(水溶性サポート)など様々な材料に対応し、より最終製品に近いモックアップが可能な「Ultimaker 3 Extended」を選択しています。
造形領域の広さを活かした水栓金具のモックアップ
水栓金具のように、実寸での評価が必要となる製品のモックアップを行う場合、背の高い部品など複数の部品を実寸サイズで造形するため、XY(幅と奥行)方向だけでなく、Z(高さ)方向にも広い造形領域を必要とします。
そして今回使用した Ultimaker 3 Extended は、Z(高さ)方向に300mmまで造形可能なため、水栓金具のような背の高い部品を必要とするモックアップに適しています。
高さのある部品も反ったりせずに造形できることが重要
この事例で紹介した水栓金具のモックアップでは、全パーツABS(純正ABS Black)材料を使用し、レイヤーピッチ「0.15mm」でプリントしていますが、FFF方式の特徴である積層跡も目立たず、綺麗に造形されていることが確認できます。
Extended を含む Ultimaker 3 シリーズは、最小ピッチ「0.06mm(カスタム設定により0.02mmまで対応)」まで対応しているため、これ以上に積層跡を目立たなくすることも可能ですが、高さのあるオブジェクトに対しレイヤーピッチを細かくすると、それに応じて造形時間が大幅に延長されてしまいます。
より迅速にモックアップを実行するためには、レイヤーの細かさよりも、造形時間と仕上がり精度のバランスが重要視されます。
実寸サイズで造形し、実際の操作性などをシミュレート
積層跡が目立たないことは、造形後の後処理(仕上げ加工)工数にも影響するため、部品毎に適した設定値の見極めが必要になります。
意匠重視のデザイン確認用部品などは、精度を落として完成までの時間短縮を優先
レイヤーピッチの違いによる造形時間の差
Ultimaker専用プリントソフトウェア「Cura」による計算時間の予測では、レイヤー0.15mmの造形時間が「1日10時間49分」、レイヤー0.06mmの造形時間が「4日10時間43分」となっており、レイヤーピッチの細かさに応じて造形時間が大幅に延長されているのが確認できます。
レイヤーピッチを細かくすることで造形時間が約3倍に延長される
上述の通り、デザイン検討段階の初期モックアップでは、精密な造形品質よりも、より素早く出力して現物を確認することが優先されるため、これらの事を考慮したプリント設定が必要となります。とは言え、造形精度が粗く、ディテールの再現性に劣っていては、意匠用途としては適していません。
今回の事例のように、高さと長さを有する部品を最適な条件で出力するには、それに応じたバランスを持つ3Dプリンタの利用が必要になってきます。
今回実務レベルとして使用した Ultimaker 3 Extended ですが、同機は複数の材料を利用した大型部品の造形にも対応しているため、実寸レベルでの評価が必要なモックアップには非常に適した機種の一つでしょう。
3Dプリント用データを活用しビジュアライゼーション
デザイン確認のために生成した3Dプリント用データを流用し、施工時のイメージをCGで再現。
実寸精度で正確に3Dデータ化することで、このようなデータの二次活用も容易になり、3DプリンタとCGを併用したデザインの追求も可能となります。
同一データから3DプリントとCGへ展開
Ultimaker 3 Extended の基本スペック
- 本体サイズ:357×338×488mm
- 本体重量:11.3kg
- 造形領域:215×215×300mm(シングルノズル)、 197×215×300mm(デュアルノズル)
- 最小積層ピッチ:0.02mm (20microns)
- ノズル径:0.4mm
- プリント速度(Max):300mm/s
- ポジショニング制度:Z軸 2.5micron、XY軸 12.5micron
- ヒーティングプラットフォーム:オートレベリング
- 電源:100-240V, 50/60Hz、24V DC : 9.2A
- 接続:WiFi、Ethernet、USB-drive
- Software:Cura
- 対応OS:Linux(12.10+)、Windows(XP+)、and OSX(10.6+)
- 対応データフォーマット:STL、OBJ、3MF
- 対応材料:PLA、ABS、CPE、Nylon、水溶性樹脂(NFC自動認識)
- フィラメント径:2.85mm
Ultimaker 3の導入についてご相談事があれば、こちらからお問い合わせください。弊社にて導入~導入後の活用まで支援いたします。
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