米国陸軍が超大型金属3Dプリンタを採用

米国陸軍、軍用車両製造に利用できる超大型金属3Dプリンタを軍需工場に設置

アメリカ応用科学技術研究機構(ASTRO America)、米国軽量材料製造技術研究所(ALMII)、米国陸軍戦闘能力開発司令部地上車両システムセンター(DEVCOM GVSC)は、米国陸軍のロックアイランド工廠(軍直属の軍需工場)のため、大型の軍用車両部品製造に対応した超大型金属3Dプリンタを開発するため提携した。

製造中の超大型金属3Dプリントシステム

この超大型金属3Dプリントシステムは、イリノイ州ロックフォードに拠点を置き、航空宇宙産業向けの複合材(超大型部品)を加工するロボットシステムの構築で豊富な経験を持つ工作機械メーカー Ingersoll Machine Tools(以下 Ingersoll)の巨大なモーションステージ上に、大型3Dプリントシステムメーカー MELD Manufacturing(以下 MELD)の開発する摩擦撹拌積層造形技術が搭載される予定で、軍用車両の大規模製造の工業化を実現しようとしている。

米軍が所有する戦車や装甲車の外板は溶接部が弱点とされており、イラクやアフガニスタンでは、即席爆発装置(IED)による被害が大きくその弱点が露呈した。しかし、IEDに対抗するためハンヴィーの装甲を強化するにはあまりにも長い時間が必要であり、耐IED用防護車の開発には更に時間が必要とされている。「Jointless Hull」と名付けられたこのプロジェクトの目的は、鍛造、成形、溶接を用いた従来の製造プロセスに替わり、製造時の溶接箇所を減らし、車体下部への攻撃に対する耐久性を大幅に向上させる軍用車両を低コストで製造することにある。

MELDとIngersollは、米軍が求める能力を有する車両のシームレスなアンダーボディ部品を製造するため、2種類のマシンを開発し納品予定。初期モデルとなるプリントシステムは、最大で1000×1000×1000mmの大きさの部品をプリント・加工する能力を持ち、デモ機として限界サイズまでの部品を造るために必要なプロセスの開発、プリント戦略等の計画立案に使用される。もうひとつのプリントシステムは、最大で6000×4500×2000mmの部品をプリント・加工する能力を有する。

MELDが開発した独自のアディティブ・マニュファクチャリング(AM)技術は、大型プリントシステムのサイズと材料要件を満たす最も有望な方法として選択された。この方法は、中空の回転ショルダー部を通して材料を供給し、基板上に堆積させるもので、MELDプロセスは、材料の溶融温度以下でプリントを行うため、システム自体に専用のチャンバー(真空チャンバー、不活性ガス環境、高度な空気処理など)を必要とせず、一般的な倉庫のようなオープンな環境でマシンを操作し、パーツをプリントすることができる。運用要件に制限されることがないため、工程の柔軟性と部品生産に必要な準備時間も大幅に短縮される。また、MELDのプロセスは材料に依存しないため、現在の技術水準を超えて次世代の材料に対しても高い性能を発揮する可能性がある。


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