統合型金属3Dプリントシステム「Fusion Factory」

複雑な金属およびセラミック部品を製造するために統合されたAMシステム『Fusion Factory』

ドイツの工業炉及び3Dプリンタメーカー「Xerion(XERION Berlin Laboratories GmbH)」は、1台のマシンで金属とセラミック部品をプリントできる、完全に統合されたオールインワンのAdditive Manufacturing(以下 AM)システム『Fusion Factory』を発表した。

Fusion Factoryは、金属フィラメントベースのFFF方式メタル3Dプリンタ(造形領域:24.5 cm x 23 cm x 20 cm)をベース、デバインディングユニットおよび焼結炉からなるモジュラーAMシステムで、金属射出成形(MIM)技術と同等のパーツを生産する能力を有しており、手頃な価格で多用途の金属またはセラミックス部品を生成することができる。

1997年に創業したXerion Advanced Heatingは、2016年に3Dプリンティング技術を開発するための子会社「Xerion Berlin Laboratories」を設立。20年以上にわたり、産業用炉の設計と製造を続けてきた同社は、その技術をベースに「Fusion Factory」を開発。

Fusion Factoryは、有機化合物と金属(セラミック粉末)との混合物である特別設計のフィラメントを、FFF方式の3Dプリントユニットに供給し、通常の樹脂素材同様のプロセスでオブジェクトを造形する。

3Dプリントされた造形物は、Fusion Factory独自のカスタマイズされたデバインディングステーションに送られ、ケミカルバスの中に造形部品を浸し、固体のマトリックス内により深く拡散した溶剤が、内部深部から有機化合物を除去。このバインダー除去プロセスで結合剤の大部分が排除され、生成された微細なチャネルは、次のステップで残りの有機化学物質の熱蒸発の出口としてさらに作用する。

このプロセスは高度に自動化されており、作業者は、溶剤または溶剤蒸気と接触することがなく、安全に作業を行うことができる。

有機成分が除去された造形物は、結合剤が排出された多孔質な部材(金属粉のかたまり)のため、丁寧に取り扱わなければ簡単に壊れてしまう。

慎重に扱いならが焼結プロセスに移行した部材は、非常に高温(>1.000℃)に加熱され、約10時間掛けて金属粉末の外殻を溶融し、高密度に収縮されて完成する。
この焼結による収縮率は、プロセス実施前にソフトウェア上からも確認することができる。

これらすべてのプロセスは、Fusion Factoryの中心部となるコントロールユニットにより高精度に制御され、あらゆるステップを慎重に調整することができる。
コントロールユニットは、グラフィカルなユーザーインターフェイスによるタッチスクリーンを備え、すべてのプロセスの完全な監視と制御を可能にし、フェイルセーフ機能(計測機器において誤動作又は何らかの障害が発生した場合に安全側に制御する機能)を内蔵。
また、データベース管理システムを搭載することにより、予めプログラムされた「レシピ」の記憶が可能になり、複数の機械で作業するという煩雑な作業を自動化し、製造される部品の品質と再現性を担保することができる。

Xerionは今後、溶剤を使用しない脱バインディングモジュールを作成し、3DプリントされたモデルとCADファイルを比較し、不一致を見つける3Dスキャナをシステムに統合したいと考えている。

MarkforgedDesktop Metalなど、同様の金属3Dプリントシステムをリリースする企業もあるが、急速に市場を拡大できなければ、簡単に他のシステム置き代えられてしまう可能性もある分野である。
成長が期待できる分野だけに、各社の動向に今後も注目していきたい。

Fusion Factory 技術仕様

  • Fusion Factory システム価格:283,000ドル
  • システム寸法:W 3,200 mm x D 1,200 mm x H 1,800 mm
  • システム重量:1,300 kg
  • 電源:CEEプラグ 400V / 32A / 50Hz
  • ガス接続:窒素 3 bar 最大20 l / min、水素 3 bar 最大10 l / min
  • Emergency bottle:窒素
  • Pressed Air:6 bar、オイルフリー

プリンタユニット

  • 寸法:W 800 mm x D 1,200 mm x H 1,800 mm
  • 作業スペース:W 245mm×D 230mm×H 200mm
  • プリンタ:3軸工業用フィラメントプリンタ
  • プリントテーブル:発熱体付きセラミックプレート
  • テーブル最高温度:摂氏120度
  • エクストルーダータイプ:フィラメント輸送用の全金属二重歯車を備えた押出し機
  • エクストルーダーの最高温度:摂氏270度
  • フィラメント直径:2,85mm
  • ノーズル径:0.3、0.4、0.5mm
  • インストールされた電力:620 W

ディバインダーユニット

  • 寸法:W 800 mm x D 1,200 mm x H 1,800 mm
  • 作業スペース:W 150mm×D 150mm×H 150mm
  • 脱バインダー法:溶媒脱バインダー
  • 溶媒:アセトン/イソプロピルアルコール
  • タンク:30リットル
  • ATEX適合:YES
  • 保護ガス:窒素
  • ガス流量:0 … 10 l / min
  • チャンバー内レベル制御:デジタル計量スケール
  • 使用済みアセトンのレベルコントロール:デジタル計量スケール
  • 暖房装置:電気暖房システム
  • 温度範囲:10〜90℃
  • ビューガラス:直径160mm(正面)

焼結装置

  • 寸法:W 800 mm x D 1,200 mm x H 1,800 mm
  • 作業スペース:W 150mm×D 150mm×H 150mm
  • 暖房設備:電気
  • 発熱体:サーメット材
  • 帯電サンプル:電空クランプ付きの引き出しタイプ
  • マックス 温度:摂氏1.550度
  • 雰囲気:N2、H2、真空、空気
  • ポンプシステム:冷却トラップ付きロータリーベーンポンプ
  • 圧力調整:10〜500 mbar(窒素雰囲気のみ)

コントロールユニット

  • 寸法:W 800 mm x D 1,200 mm x H 1,800 mm
  • コントローラ:Siemens S7 – 1500コントローラは部分的にフェールセーフ
  • HMI:42 “タッチスクリーン
  • スクリーン:3つのユニットのビジュアライゼーションを処理、3つのユニットすべてのレシピ編集
  • レポート:すべての技術的なステップの情報を含むPDF形式
  • アラーム:光学式および音響式の表示
  • データダウンロードインターフェース:USB

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