3Dプリント技術を利用したデバイスが針無しでワクチン接種を可能にする
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、3Dプリンタで生成された小型デバイスを利用し、ユーザーの口腔内から簡単にワクチン接種可能な医療技術を開発している。
「MucoJet」と呼ばれるこのシステムには、安価な生体適合性のある防水プラスチック樹脂を材料に3Dプリントされた15×7mmのカプセル型(円筒形)デバイスが使用されている。
MucoJetには、2つコンパートメント(仕切られた区画)が設けられており、外装コンパートメントには250mlの水、内部コンパートメントには多孔質プラスチック膜と可動ピストンで分離された2つのリザーバが含まれている。
1つの内部区画端部にピストン、他方の端部には直径200マイクロメートルの送達ノズルを有しており、ワクチン溶液100mlの貯蔵部となっている。
患者がカプセルデバイスを押し込むと、内包膜を溶解し水が化学推進物質に接触。その後の化学反応によって二酸化炭素ガスを発生させる。発生したガスが推進剤チャンバ内の圧力を上昇させ、ピストンを動かし、ワクチン貯蔵部のノズルシールを破壊。約10秒ほど待つと、ワクチン溶液がMucoJetノズルから排出され、圧力により頰の組織膜を破壊してワクチンが頬側組織の粘膜層に浸透。排出されたワクチンを抗原提示細胞と呼ばれるワクチンターゲットに送達する。
注射器に代わる有効なデバイス
途上国や遠隔地などで注射器によるワクチン接種を実施には、スタッフやボランティアに注射器を用いた訓練を実施しなければならず、これには多くの時間と費用がかかるため、ワクチン接種を広めることが困難になってしまう。
これらの課題を克服するためMucoJetの研究者たちは、針を使わず簡単にワクチン接種可能な無菌注射器「MucoJet」を開発している。MucoJetは痛みもなく、従来の注射器によるワクチン接種よりも安価で効果的にウイルスを退治することできるとしている。
研究チームは、豚やウサギを使った試験でMucoJetが薬物を送達するのに効果があることを示しており、今後は小さな子供でも簡単にワクチン接種できるような様々なサイズやデザインを研究し、5~10年程度で市場投入を目指している。
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