ウラル連邦大学の研究チームが3Dプリンタでミニチュア永久磁石の作製に成功
ロシア・ウラル連邦大学の研究チームは、希土類金属をベースにした硬質磁性化合物から小さな永久磁石を3Dプリントするための最適条件を決定する事に成功した。
永久磁石は、外部から磁場や電流の供給を受けることなく、長期間に渡り磁界を発生させることができる物体であり、その性質を利用した電気モーター、家庭用機器、コンピューター機器、その他の家電製品の製造など、さまざまな産業や機器に利用されている。しかし、機械加工による従来の製造方法では、加工時にゴミとなってしまう材料も多く、大型の物しか作れないため複雑で小さな永久磁石をつくることは、科学的にも技術的にも難しいとされてきた。研究チームは、磁気的に硬い材料から複雑な形状の部品をつくる方法として、3Dプリンティング技術に注目。SLS方式の3Dプリンタと磁性粉末を用いて、小さな永久磁石を3Dプリントするための最適なパラメータを決定することに成功。これにより、どんな複雑な形状の永久磁石でも少量生産が可能となるという。
研究チームは既に、サマリウム、ジルコニウム、鉄、チタンを含む粉末を使用して、工業的に生産される磁石と同様の特性をもつ、薄型(約1ミリ)の永久磁石の製造に成功している。この化合物は永久磁石に適した特性を持つが、従来の製造方法ではその特性のほとんどを失ってしまうため、研究チームは3Dプリンティング技術を使い、その特性を維持できるかどうかを確認した。
ウラル連邦大学の磁気・磁気ナノ材料学科准教授で、固体磁気セクションの研究者であるドミトリー・ネズナキン氏は次のようにのべている。
「小さな永久磁石を作るのは非常に大変なことです。現在は、大きな磁石を切り出して作っていますが、機械的な加工をするため材料の約半分がゴミになってしまいます。また、切断すると表面近傍に多くの欠陥が発生し、磁石の特性が大きく損なわれてしまいます。アディティブテクノロジーでは、これを回避することができます。例えば、N極が1つでS極が空間的に2つ離れている磁石や、S極とN極が一度に5つある磁石など、複雑な磁石を作ることもできます。このような構成はペースメーカーに必要で、電気モーター用のローターは、顕微鏡下で別々の磁石から組み立てるしかありませんでした。」
3Dプリンティング技術を用いた永久磁石は、生産のほぼすべての段階で磁石の内部特性を変更することが可能で、化合物の化学組成、結晶子の空間配向の度合い、結晶学的テクスチャーを変えたり、保磁力(減磁に対する抵抗力)に影響を与えたりすることができる。これにより、生産の無駄を最小限に抑え、複雑な形状の永久磁石の小規模生産を実現する。
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