研究者が人工生体組織の3Dプリント技術を開発

ウィーン工科大学研究チームが革新的な3Dプリント法で人工生体組織の製造に成功

ウィーン工科大学(TU Wien)材料科学技術研究所の研究チームは、人工生体組織を3Dプリントするための新しい手法を開発。この手法は、高解像度のSLA方式の3Dプリント技術を利用して、生体適合性および分解可能なプラスチックから微細で多孔性の球体状の足場を製造する。3Dプリントされた球体状の足場は、幹細胞で植え付けられ、特定の幾何学的形状に配置される。

生きた細胞で満たされた3Dプリント構造物

軟骨は、関節や骨を保護するために身体の様々な部位に見られる強固な結合組織で、従来の方法では作製が難しいことで知られているが、研究チームはこの研究を通じて、細胞を組み合わせて生きた軟骨組織を形成できることを実証した。

3Dプリントされた足場の拡大図

研究を率いるコピンスキー・グリュンヴァルト教授によれば「幹細胞から軟骨組織を培養する際の主な課題は、最終的な形状をコントロールできないことである。これは、幹細胞の塊が時間とともに形を変え、しばしば収縮するという事実にも起因します」と説明。研究チームは、特別に開発したレーザーベースの高解像度樹脂3Dプリンタによる二光子重合法を用いて、直径わずか1ミリの3分の1、つまり333μmの微細な球状の足場構造を作製し、この課題を克服。
次に研究チームは、分化した幹細胞をサッカーボール型のミニチュア構造体に加えた。これらの細胞は、どのような組織にも成長することはできず、代わりに特定の種類の組織、この場合は軟骨を形成するように指示され、いったん3Dプリントされた足場に加えられると、細胞はすぐに小さな容積を埋める。3Dプリントされた細胞支持構造は、最終的にコンパクトなビルディングブロックを形成し、必要な形状に組み立てることができる。

生きた細胞が増殖する足場はあらゆる形状に組み立てることができる

この新しいアプローチは、軟骨組織に限定されるものではなく、骨組織などのさまざまな種類の大きな組織を調整するために使用できる可能性がある。革新的なこの3Dプリンティング手法をより複雑な医療用途に拡大するためには、より大きな3Dプリンティング組織に血管を組み込むなどの重要な課題を克服する必要がある。
研究チームは、今回の発見が医療処置において損傷した軟骨の代わりとなる人工組織を作るための新たな可能性を開くことを期待している。


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