- 2018-9-12
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Formlabs日本法人に聞いたFormlabsの近況と今後の戦略について
クラウドファンディング「Kickstarter」からスタートアップした3DプリンタベンチャーFormlabsは、今夏、1,500万ドルの資⾦調達の実施と、GE社元会⻑兼CEOのJeff Immelt⽒を取締役に選任したことを発表し、NEA(国際的なベンチャーキャピタルファーム New Enterprise Associates)からユニコーン企業(10億ドルを超える企業価値を有する企業)として認定され、国内外で急成長を遂げる同社の近況や今後にいて、Formlabsの日本法人「Formlabs株式会社」マーケティング部 部長 新井原 慶一郎氏(以下 新井原氏)に話しをうかがいました。
Formlabs 米国本社受付
記者:「それでは早速お話しを聞かせていただきたいのですが。新井原さんは先日、米国本社へ訪問されたそうですが、今回の訪問の目的を公開可能な範囲でお答えいただけますか?」
新井原氏:「今回は、世界中のマーケティング担当者、製品開発担当が一堂に会してチームビルディングを行いながら、Formlabsの戦略や問題意識の共有、ワークショップの実施を通じて数々の “Formlabsならでは” を産みだしていくことを目指しました。」
ミーティング中の様子
記者:「Formlabsは、先日の資金調達(関連記事リンク)などを経て、ユニコーン企業へと大きく発展していますが、一連の流れを経た米国本社の様子はいかがでしたか?これまでと変わった点などはありましたか?」
新井原氏:「大きく変わったことが2つあります。ひとつは、従業員数の爆発的な増大。もうひとつは米国オフィスの拡大です。従業員数は、私がFormlabsに参画した1年10ヶ月前と比べて倍以上になりました。米国オフィスは、1つのビルの約1フロア相当から2フロア相当となり、更にすぐ近くの2箇所のビルに建物数が増えました。逆に変わっていなかったのは、3Dプリント市場を革新していくという静かで熱い情熱を持ったフレンドリーな仲間たちです。」
僅か数年でユニコーン企業へと成長したFormlabs
記者:「御社は日本法人設立から未だ間もないと思いますが、日本国内の3Dプリンタ市場は、若干飽和状態のようにも感じられます。そのような状況の中、御社から見た日本市場の現状について教えてください。」
新井原氏:「国内市場はユーザー層やその方々のニーズが変わってきたように感じられます。光硬化樹脂(レジン)を用いて造形する光造形(SLA)方式Form 2を導入するユーザーは法人の割合が増加しています。誰もが知っているような著名な大企業だけでなく、今までになかった製品を産み出すために誕生した中小企業、個人事業主の方々も多いです。そして、レジンに対するニーズも多様化の様相を呈しています。微細な造形できれば良いというだけでなく、衝撃に強い、熱に強い、靱性に優れるといった特長ある物理特性を持ったレジンが求められています。これにより多種多様な目的に沿った造形が可能となり、Form 2の優位性が増大し市場を牽引していくようになってきています。またその逆に、より大型の3Dプリントもしくは安価な3Dプリントを可能にするFDM/FFF方式や最終製品としても使用することを想定した粉末焼結を核とするSLS方式も存在感を維持、拡大しています。ユーザー視点からすると、さまざまな方式の3Dプリンタ、特徴を持った素材が市場に投入されている現状は選択肢が豊富にあるということと同時に、困惑を生んでいるのかもしれません。混乱してしまったユーザーの悩みや願いを汲み、適切なアドバイスが求められているとも言えます。」
ホビーユースから医療分野まで、様々な分野に対応した材料開発力で他社を圧倒するFormlabs
記者:「御社のFacebookページやTwitterを拝見していると、昨今様々なプロジェクトに協賛されているようですが、代表的な幾つかのプロジェクトについて、ご紹介できる案件があれば教えていただけますか?」
新井原氏:「多方面の方々からFormlabsにとても大きな注目をいただいていることを光栄に思っています。直近の興味深いプロジェクトは、日本大学の青木教授が進めていらっしゃる “宇宙エレベーター” です。オートデスク株式会社の方からご紹介いただいたものですが、9月中旬に開催される世界大会に挑む日本大学さんの “宇宙エレベーター” の実現をサポートしています。多くのパーツはAutodesk Fusion 360で新規に設計され、金属や炭素繊維を用いて実装されています。その先端および後端に装着されるフェアリング(カウル)もFusion 360で設計されていますが、3次曲線で設計されたデザインを忠実に造形すること、そして軽量かつ負荷に耐えられる高靱性、耐久性も求められました。そのため、ポリプロピレンを模したDurableレジン、ゴムのような柔軟性を持つFlexibleレジンを用いてForm 2で出力しました。設計の変更に素早く対応すること、想定通りの形状の実現、装着や脱着のしやすさを可能にしたのは、様々な物理特性を持ったレジンラインナップとForm 2での出力であったと自負しています。」
また「Fusion 360マスターズガイド」という教則本内で作成されているデータを出力という面から書籍作成を支援したり、障害を持つ方自身が作成された自助具の試作を支援したりということも平衡かつ突発的に行ったりしています。
部品生成にForm 2を利用した宇宙エレベーター(日本大学)
記者:「クラウドファンディングからスタートした3Dプリンターメーカーとしては独り勝ち状態のFormlabsですが、米国本社の目指す今後の展開について、公開可能な範囲でお答えいただけますか?」
新井原氏:「私たちが提供しているForm 2は光硬化樹脂を用いる3Dプリンタの中の一部の方式です。まずはその中で最も選ばれるメーカー、製品になりたいと思っています。そのために何が必要かを愚直に考え実施していきます。また私たちにとって新しい分野であるSLS方式を具現化した「Fuse 1」(関連記事はこちら)を市場に展開し、挑戦する領域を拡大します。但しこれは、市場を混乱させるためではなく、プロフェッショナルな方々すべてに優れた3Dプリンタをお届けするという私たちの思いのためです。」
2019年に発売を予定しているFormlabsのSLS方式3Dプリンタ「Fuse 1」
記者:「最後に、今回の本社訪問を経て、新井原さんが個人的に感じられた事があれば、教えてください。」
新井原氏:「Formlabsはまだまだ若い会社です。3Dプリンタ市場を最も初期に切り拓いてきた巨大企業の足下にも及びません。会社としての機能やお客様に提供すべきサービス内容など、まだまだ未熟な点が多く、従業員が辟易してしまう可能性もあります。
経営陣も含め多くの若い従業員が結婚、出産、チームの爆発的な拡大といったような新しい事象を経験しています。成長を続けている〜、米国企業だからという麺も確かにありますが、経営者や部門長自身が人材の多様性やキャリア形成の中で起きることを当事者意識を持ちながら支援することで、これから企業が持たなければいけない制度や部門内の意識が自然に醸成されている印象を受けました。
また、ビジネスという観点で当然のことですが、徹底的な選択と集中を行うことで、驚異的な製品開発を行っています。これは、やみくもに似たような製品(3Dプリンタや消耗品)を市場投入することではなく、Formlabs製品をより多くの方々に、より深く使っていただくための新しい提案を今後も行うんだ!という気概にも通ずるものがあります。
目下の目標はFuse 1やForm Cellを早期に市場へ投入することです。そのため、社内ではこれらの製品開発に関する片鱗を数多く見ることができました。
Formlabsとしての成長率やその堅実性、即断即決の速さが競合他社に負けているとは思いませんし、とても正しい道をすすんでいると確信しています。また、社内に閉塞感はなく、Formlabsが3Dプリンタ市場で最も素晴らしい会社になると確信しています。私自身はより一層Formlabsが好きになりましたし、まだまだできることがあるはず、と思っています。」
2018年9月11日 取材内容より(取材対象者:Formlabs株式会社 マーケティング部 部長 新井原 慶一郎氏)
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