Form 2で熱光学ピストルを制作

映画「Ghost In The Shell」で使用された熱光学ピストルを3Dプリンタで再現

2017年4月7日に日本公開となった映画『Ghost In The Shell
原作漫画とアニメ共に世界中にコアなファンを有する作品のため、映画の内容について賛否が分かれる作品となったが、今回の事例では、劇中でスカーレット・ヨハンソン演じる少佐(Major)が所有していたハンドガン「熱光学ピストル」を、FormlabsのSLA方式3Dプリンタ「Form 2」で再現してみたので、その工程を簡単にまとめて紹介したい。


劇中で使用されていた熱光学ピストル

劇中で使用されていた熱光学ピストルのプロップは、恐らく、前回紹介した記事「3Dプリント技術を活用した実写版『攻殻機動隊』」でエンドスケルトンの制作を担当したWeta Workshopが手掛けた物だと思われる。
今回Form 2で制作したハンドガンは、このプロップを参考にした物となっている。

FFF(FDM)方式3Dプリンタで事前チェック

今回は、Form 2で本番造形を開始する前に、材料が安価なFFF(FDM)方式3Dプリンタを利用した仮モデル製作を行っている。

このモデルは、PLA(Polymaker PolyPlus)材料の利用を前提に、造形精度よりも短時間で造形できることを優先に設定。完成した造形物を利用し、各パーツの納まりやサイズの確認、修正を行い、本番用モデルデータの調整を行っている。

MOMENT S 3DプリンタとPLA材料で仮モデルを造形

3種類の材料で各パーツを造形

前述した工程で修正したデータを元に、材料の種類が豊富なForm 2の特徴を活すため、造形パーツ毎に適用する材料を選定。

  • Whiteマテリアル:グリップ、スライド(前後)、トリガーガード前部(リコイルプラグ下部)他
  • Clearマテリアル:トリガーを含む透明部分
  • Greyマテリアル:弾丸、バレル先端などメタル感を演出する部分

使用する材料毎に分けたパーツをPre Formに読み込み、造形の準備を行う。

Form 2は、使用したプラットフォーム毎に適用材料の情報が記録されるため、複数種類の材料を利用する際には、材料分の造形プラットフォームが必要となる。

3Dプリント中の透明パーツ

Form 2+Clear材料でプリントされた透明パーツは、表面の仕上がり精度も良く、反りや歪みもほとんど発生していない。


ポストキュアを終えた透明パーツ

他の材料で造形した物も含め、洗浄~ポストキュア~サポート除去を行ったパーツは、全て研磨材によるバリ取りと仕上げ加工を施している。
今回の研磨作業では、プロ仕様の3Dプリント用研磨材TuneD3シリーズ「TuneD3 BASIC」と「TuneD3 STANDARD」の2種類の研磨材を利用し、仕上げている。

※ 透明アクリルの研磨方法については「透明アクリル素材の研磨事例」を参考にしてほしい。

深溝や研磨材が届きにくい部分については、FFF(FDM)方式3Dプリンタで部位に適したサイズの冶具を造形し、研磨材を貼り付けて使用している。こういった治工具を必要に応じて簡単に作れてしまうのも、3Dプリントのメリットである。


使用する部位のサイズに応じて制作した研磨用冶具

マットな質感で積層跡がほとんど目立たないGreyで造形した弾丸「9mmパラベラム弾」は、研磨処理せずにそのままサーフェーサーを吹き付け、下地塗装~仕上げ塗装を行っている。

※ 劇中で使用された熱光学ピストルがグロック19をベースにしているようなので、弾丸には9mmを選定。3Dプリント可能なこの9mmパラベラム弾のデータはこちらにアップしてあるので、自由に利用してもらって構わない。


Greyで造形した9mmパラベラム

3Dプリント後に着色した9mmパラベラム弾の塗装には、2種類のメタリック系塗料を使用。サポート跡のバリ取り以外の研磨処理はしていないが、表面に積層跡がほとんどないため、塗装後の完成度も非常に高い。

弾丸塗装に使用した塗料

パーツの組み立て作業

3Dプリント造形から仕上げ処理が済んだ各パーツを組み立て、熱光学ピストルを完成させる。


材料毎に造形~仕上げされたパーツ類 

組立完成した3Dプリント熱光学ピストル

塗装~接着直後のため仕上がりの甘い部分もあるが、細部に汚しなど入れれば、更に完成度は高まるはず。

0.05mmピッチで造形した部品の溝などもキレイに再現されている

下は、ダミーカートと並べた3Dプリント製9mm弾。光沢感こそ異なるが、この3Dプリント製9mm弾にメッキ処理を施せば、かなりリアルに仕上げることもできる。

ダミーカートと並べた3Dプリント製弾丸

銃に詳しい方にはツッコミどころ満載の作品かもしれないが、今回は、使用する材料コストを抑えることを優先したため、余計な部分の肉の削ぎ落しや表面的な部分だけの作り込みに徹している。このため、プロップレベルまでとはいかないが、コスプレ用小物などの用途であれば、十分な精度で完成していると思える。
ここまで完成度を上げられたのは、Form 2の造形精度と材料品質の高さによる部分が大きい。


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