3Dバイオプリントされた心臓細胞

モントリオール大学の研究チームがパーソナライズされた心臓デバイスを3Dプリントするためのバイオインクを開発

カナダの国立大学モントリオール大学(UdeM)に所属するセントジャスティン病院のアズリエリ研究センターの研究チームは、リアルな心臓細胞を模倣する「HEART ON A CHIP」デバイスを3Dプリントするための新しいバイオインクを開発した。この新しい3Dプリンタブル複合バイオインクは、人間の心臓の電気活動、機械的特性、および生理を正確に反映するという。

リング状の3Dプリント心臓デバイス

研究チームは、異なる心臓細胞タイプを持つリング状の心臓デバイスを3Dバイオプリントするため、この新しいバイオインクを使用。高速かつ自動化された3Dバイオプリントプロセスを利用して、ウェルプレート(細胞培養用のプレート)内で心臓モデルを製造することに成功した。

3Dプリントされた「HEART ON A CHIP」

この新しい3Dプリンタブルバイオインクは、光架橋可能な天然ポリマーであるゲラチンメタクリロイル(GelMA)、アルギン酸メタクリレート(AlgMA)、および電気伝導性の高い還元グラフェンオキサイド(rGO)ナノ材料に基づいている。研究チームは、ハイドロゲル成分を合成し、特性を評価することで、様々な材料濃度のバイオインクを調整。最適な3Dプリンティングバイオインクの配合を開発するために、物理化学的特性、構造的特性、電気機械的特性、細胞性毒性、3Dプリンタビリティ、および分解性の異なる組み合わせを調査した。

研究チームが最適化したバイオインク製剤は、高レベルの心臓細胞の生存、増殖、拡散、伸長、整列をサポートし、細胞の自発的拍動を含む実際のヒト心臓機能を正確に反映することができる。

論文著者 Houman Savoji教授とAli Mousavi氏

現在の3Dプリント心臓モデルは、研究室で個別に製造されているため、工業的規模の生産への拡張性に欠けているが、研究チームが開発した自動化された高スループットの3Dバイオプリントプロセスの運用が本格化した際は、医療専門家が心疾患の個別の症例をより深く理解するのに役立ち、新しい心臓関連薬の開発に寄与することが期待されている。将来的には、心臓病患者の細胞から心臓モデルを3Dプリントし、特定の心疾患のケースに対するパーソナライズされた医療治療を実現することを目標としている。


関連記事

3DP id.arts の最新投稿をお届けする「Newsletter 3DP id.arts」への登録はこちら

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でid.artsをフォローしよう!

     

ページ上部へ戻る