シーメット世界最速の大型砂型3Dプリンタを開発

シーメット世界最高速クラスの大型鋳造用砂型3Dプリンタを製品化

シーメットは、NEDOプロジェクト(次世代型産業用3Dプリンタの造形技術開発・実用化事業)の成果のもと、毎時10万cm3の速度で造形する大型鋳造用砂型3Dプリンタ「SCM-1800」を製品化、5月7日から販売を開始した。

「SCM-1800」は、同社が展開する砂型3Dプリンタ「Sand Casting Meister」シリーズと比較し、造形速度10倍の高速化と造形サイズ10倍の大型化に加え、造形後の後工程作業時間の半減を実現している。

鋳造業界の現状

鋳造業界における砂型製造は、従来の木型工法では工数・コストの削減に限界があり、技術者の高齢化と後継者不足も重なり、より高精度・高難易度かつ短納期・低価格の市場要求に応えることが困難な状況になりつつある。

このような背景のもと、NEDOプロジェクトにおいて、技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(以下 TRAFAM)は、高速で大型の鋳造用砂型3Dプリンタの研究開発に着手。鋳造用砂型3Dプリンタは、木型の製作期間・コストが不要になるだけでなく、従来工法では制約のあった複雑な形状の鋳型に対しての制約が無くなり、一体でダイレクトに造形できるため、精度と作業性が向上し、かつ設計の自由度が広がる。TRAFAMは、これまでに世界最高レベルの造形速度の3Dプリンタ技術を開発し、その後、大型高速機としての運用実証と改良および鋳型の造形評価・鋳造評価を続けてきた。

これらの開発成果をもと、シーメットは、従来同社製品の10倍の造形速度となる10万cm3/h、乾式砂を用いることで造形後の後工程作業時間を1/2に短縮した、約10倍の造形サイズ(1800mm×1000mm×750mm)を有する世界最高速クラスの大型鋳造用砂型3Dプリンタを製品化。5月7日から販売を開始し、産業機械、自動車などのさまざまな分野における鋳造現場の生産性向上に貢献する。

高速大型鋳造用砂型3Dプリンタ「SCM-1800」の特徴

鋳造用砂型3Dプリンタとして世界最高レベルの造形速度
本開発装置はバインダジェット方式(液体結合剤を選択的に供給し粉末材料を結合する製造プロセス)で、造形速度の向上には、積層工程1層ごとの動作時間を短縮する必要があり、リコータ(砂を敷きつめる部品)の高速化・双方向化、プリントヘッドのラインヘッド化と高速化・双方向化、プリントパターンデータの転送時間短縮などにより、従来の10倍の造形速度での高速連続動作を実現。

高性能かつ作業性に優れた乾式砂と1液方式
本開発装置は、固体触媒をコーティングした砂に、プリントヘッドから有機バインダを噴射して反応硬化させる1液式を採用し、使用材料として乾式砂を用いることで、造形後の後工程の作業時間を1/2に短縮するなど、高性能かつ作業性に優れている。

  • 高流動性:砂を敷く際の流動性が低下しないため、凝集しやすい球形の人工砂が適用可能であり、高耐火性を利用して、鋳込み温度が高い鋳鋼にも対応可能
  • 高強度:硬化反応を阻害する溶媒を減らせるため、短時間で高い鋳型強度が得られる
  • 付帯作業性:造形後の硬化部分と未硬化部分の分離が良く、エア噴射などによる砂除去作業が容易
  • 砂再使用:造形部分以外の未硬化砂は、そのまま回収して再使用が可能

鋳型の量産設備としての可能性
砂型3Dプリンタは、多くの優位性を有していても、生産性の問題から、鋳型の量産設備としては考えられてきたが、今回開発した装置では、1800mm×1000mm×750mmの造形サイズと10万cm3/hの造形速度を実現したことにより、自動車部品に用いられる小型の中子などを、本装置1台で量産可能となる。

SCM-1800の仕様

  • 製品名 Sand Casting Meister 「SCM-1800」
  • 造形方式 バインダジェット方式
  • 販売先・市場 産業機械、自動車/機械工業、鋳造業
  • 造形サイズ 幅1800mm×奥行き1000mm×高さ750mm
  • 適応材料 CCS/専用バインダ
  • 積層ピッチ 0.28mm
  • 受注開始日 2018年5月7日

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