3Dプリントで低コスト顕微鏡を製作

ストラスクライド大学、3Dプリント技術を活用し僅か3時間で製作可能な低コスト顕微鏡を開発

スコットランドの国立大学 University of Strathclyde(ストラスクライド大学)の研究チームが、3Dプリント技術を活用して、3時間以内で製作可能な低コストの顕微鏡を開発した。この顕微鏡は、3Dプリントされたフレームとレンズを備え、僅か50ポンド(約9,500円)の低コストで製作できる。

医療分野では、3Dプリント技術がカスタムメイドの義肢や手術準備用の解剖モデル、インプラント、手術用ガイドなどの設計に広く利用されている。しかし、診断機器の製造に3Dプリントが活用される例はまだ少ないのが現状である。
そこでストラスクライド大学の研究者たちは、3Dプリント技術を用いた顕微鏡開発プロジェクト「OpenFlexure プロジェクト」で公開されているモデルを選択し、カメラ、光源、Raspberry Piを組み合わせて顕微鏡を製作した。

研究チームは、約10時間かけ、「Bambu Lab X1C」3Dプリンタで各フレーム部品をプリント。コンデンサーレンズは、市販のレンズを基にFusion 360で再設計。完成したSTLファイルをLycheeSlicerにインポートし、Formlabs製の樹脂材料を用いて「Elegoo Mars 3 Pro」樹脂プリンターでプリントした。

研究チームは3Dプリントされた顕微鏡の性能を評価するため、標準的なテストターゲットやギムザ染色された血液塗抹標本、ヘマトキシリン・エオシン染色されたマウスの腎臓組織などを用いて複数のテストを実施。その結果、細胞内の構造が確認でき、個々の赤血球やマウスの腎臓組織の詳細な解剖学的構造を鮮明に観察できることが示された。

この成果は、3Dプリント技術を活用することで、顕微鏡の製作コストを大幅に削減できる可能性を示している。これにより、予算が限られた研究室や教育機関でも、高品質な顕微鏡を手に入れることが可能となる。デバイスを開発したポスドク研究員のリアム・ルーニー博士は、「この技術は、従来の顕微鏡の一部の価格で、民主化されたアクセス、迅速なプロトタイピング、そしてオーダーメイドの顕微鏡や光学機器の設計を可能にします。これは、世界中の低所得国の科学者や医師を支援するだけでなく、学生が手頃な価格のキットを通じて科学を学ぶ手助けにもなります」と述べている。


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