水深6000mを自律航行する無人潜水機、3Dプリント製造が支える海中ドローン量産と設計革新の可能性
米防衛テック企業 Anduril Industries が開発した自律型無人潜水機「Dive-LD」が、ホルムズ海峡付近でイラン側に回収された。長距離の海底調査や監視を目的に開発された機体には大型3Dプリンターを活用した製造技術が取り入れられており、軍事分野における3Dプリントの量産性が改めて注目されている。

Dive-LDは、全長約5.8m、直径約1.2mで、最大約10日間の連続運用と水深6,000m級での活動に対応する自律航行型の無人潜水機(AUV)である。用途は海底地形の調査、機雷対策、情報収集、海底ケーブルやパイプラインの点検など幅広く、1立方メートルを超えるモジュール式ペイロード区画に任務ごとのセンサーを搭載できる。
今回の機体について米側は、技術的な故障によって海上で動けなくなり、回収された旧型機で、機密性の高いデータや装備は搭載していなかったと説明している。一方、イラン側が機体を詳しく解析すれば、構造や材料、製造方法に関する知見を得る可能性は残る。2011年にはイランが米軍のRQ-170無人偵察機を回収し、その後類似機を開発した経緯もあり、今回もリバースエンジニアリングへの関心が集まる。

3Dプリンターの観点で重要なのは、Dive-LDが「巨大な潜水機をすべて一体造形する」仕組みではなく、外装パネルやペイロード周辺などを大型積層造形で効率よく製造・変更できる設計思想にある。米オークリッジ国立研究所はAndurilと共同で、大型3Dプリンターを用いた無人潜水機用ポリマーパネルの研究を実施し、コーティングや繊維補強を含む試験を経て、実機規模の車両を海上試験まで進めている。こうした方式では金型への依存を減らし、設計変更や少量多品種生産を短期間で行いやすい。

今後、3Dプリンター材料には、軽量性だけでなく耐水圧、耐衝撃性、海水環境での耐久性、繊維強化材との組み合わせなどが一段と求められる。航空ドローンで広がった、安価な無人機を多数運用する考え方が海中へ移れば、大型3Dプリントは試作手段から量産インフラへ変わる可能性がある。
今回の回収事件は軍事上の情報戦であると同時に、3Dプリンターが次世代の海洋ロボット生産を左右する技術になりつつあることを示す象徴的な事例である。
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