3Dプリントされた鼻を体内で成長させ移植

がん患者の前腕に3Dバイオプリントされた鼻を移植し成長させて治療する画期的な手術法

フランスの総合がんセンター Claudius Regaud Institute(クラウディウス・レゴー研究所)と、Toulouse University Hospital(トゥールーズ大学病院)の研究チームは、癌患者自身の前腕で成長させた3Dプリントインプラントを用いた鼻の再建手術に成功した。

患者の前腕と3Dバイオプリントされた鼻 Photo : Toulouse University Hospital

2013年に鼻腔癌の治療のため鼻の大部分を失った女性患者は、治療後4年以上に渡り、皮弁移植の失敗や顔面補綴の装着が困難なことから、鼻がない状態で生活していた。何度も再建手術を受け、失敗を繰り返してきた患者に対し医師は、従来の治療法に代わり、自分の皮膚下に3Dバイオプリントされた鼻を移植し育てるという、実験的な外科手術を提案。この治療法を受けることを承諾した患者は、生体適合性のバイオセラミックから3Dプリントされた鼻を自身の前腕に移植し、2カ月間成長させた後に取り外し、顔面に移植することに成功した。

3Dプリントによる顔面骨移植片 Photo : CERHUM

担当医は、ベルギーの医療機器メーカーで、骨移植3Dプリントのスペシャリストある CERHUM の臨床チームと協力し、生体材料をベースとした鼻の形を模した構造体を作製することに成功。これを患者の腕に移植して育て、準備が整ったところで吻合(血管や神経を外科的に繋げる)マイクロサージェリー(微細な組織に対して顕微鏡を用いて行う手術)で再灌流を行った。

治療を担当した外科医によれば、患者は入院と3週間の抗生物質投与を受けたが、それ以外は非常に順調に回復していると伝えている。

頭蓋骨モデルに取り付けられた手術用ガイド Photo : 3D Systems

この手術の成功に重要な役割を果たしたCERHUMは、今年初めに欧州の患者への使用が承認された独自の「MyBone」顎顔面インプラントを用いて、研究開発、開発製造受託機関(CDMO)、移植用など数千のデバイスを製造している。これらのインプラントの活用には、他の合成材料よりも生体親和性が高いとされている生体適合性バイオセラミックの存在が欠かせない。この3Dバイオセラミックプリントは、多孔性を制御し、患者に合わせて形状をカスタマイズして3Dプリントすることができるため、標準的なインプラントよりも治癒を早め、患者が受けなければならない手術の期間と回数を減らすことができるとしている。


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