米国陸軍は戦地の廃棄物から部品を3Dプリント

米国陸軍は廃棄物からリサイクルされた材料を利用し戦地で必要な部品類を3Dプリントする

遠隔地となる戦地で活動する兵士等にとって、故障した装備品の交換部品を受け取るため、数週間もの間待ち続けることは、進行中の任務に大きな支障をきたすだけでなく、不要なコストを生み出す原因となりかねない。
そのような問題を解決するため、米国陸軍研究所と米国海兵隊の研究チームは、ペットボトルやダンボールなど、戦地で不要となったリサイクル可能な廃棄物から材料(フィラメント)を生成し、3Dプリンタで代替部品を製造する方法を開発した。

3Dプリント技術を利用した部品製造に転じる最大の理由は、交換部品の輸送に掛かる日程やコストを削減し、より円滑に任務を遂行することにある。
研究チームは、戦地で必要な部品類がリサイクルされた材料と3Dプリンタを使用し、数時間で部品製造可能であることを証明するため、基地内のカフェスペースにある捨てられたペットボトル、ミルクボトル、ダンボール箱など、リサイクル可能な物品を収集し、3Dプリンタ用材料として工具や部品などを生成している。

ペットボトルリサイクルフィラメント「Recycled PET

ペットボトル(PET)が比較的容易にフィラメントにリサイクルされることは知られているが、実際にリサイクル材料として活用することで、一般的に前線基地などにストックされないような小さなプラスチック部品などを3Dプリントすることが可能となる。
研究チームによれば、戦地で入手可能なペットボトルから生成されたフィラメントは、市販のPETフィラメントと同等の強度と靭性を有しているという。
下の車両用ラジオブラケットは、リサイクルされた10本のペットボトルから生成された物で、僅か2時間程度で全プロセスを完了させている。


テストプリントされた車両用ラジオブラケット

また研究チームは、ヨーグルトやチーズなどの容器に使用されるポリプロピレン(PP)や、プラスチック製品に使用されるポリスチレン(PS)など、ペットボトル以外のプラスチック廃棄物を利用したリサイクル3Dプリントについても研究を重ねている。
これらの材料は単体では十分な機能を有していないが、他のプラスチックや段ボール、木材繊維および他のセルロース廃棄物を混合することで、高い強度を得られることを確認している。

これらのリサイクルプロセスを実現するため研究チームは、移動式のリサイクルトレーラーを開発中である。この設備では、プラスチックおよび紙類などの材料を二軸回転式スクリュー粉砕機で粉砕し、そこから生成された粉末を溶融加工してフィラメントを作成する。
このシステムに合わせ訓練された兵士等は戦地において、必要に応じたリサイクル原料フィラメントを生成することができるようになると言う。

米海兵隊は戦闘機用3Dプリント部品の製造に成功

米軍では、高額な兵器部品の導入コストを抑えるため、3Dプリント技術を活用した様々な試みを行っている。

メリーランド州カーデルックのCombat Logistics Battalion 31(CLB-31)の米海兵隊では、F-35ステルス戦闘機の扉に取り付けられた着陸装置のコンポーネントを3Dプリント部品に置き代えることに成功。

カーデルックのAdditive Manufacturing Project Officeの機械技術者であるSam Pratt隊員は、3DCADソフトウェア「SolidWorks」と フリーソフトウェア「Blender」を使用し、F-35ステルス戦闘機のドアに取り付けられる着陸装置のコンポーネントをモデリング。エンジニアによって複製されたコンポーネントはPET-G材料で3Dプリントされ、僅か9セントで完成。これにより70,000ドルものコストを節約した。

現在、海兵隊指令(MSC)から陸上車両向けにプリントすることが承認されている部品は85~90品目あり、データをオンライン上から共有し3Dプリントすることで、各基地などで部品製造が可能となる。現在はプラスチック部品が中心となるが、今後は金属3Dプリントにも対応させ、現場でより多くの材料能力を提供することが可能となるはずである。


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