MIT、3Dオブジェクトのパッキング手法を発表

MITとInkbitが高効率な3Dオブジェクトのパッキング手法「Scalable Spectral Packing」を発表

MITコンピュータ科学・人工知能研究所(MIT CSAIL)の研究チームは、マルチマテリアル3Dプリンタ開発企業 Inkbit と共同で、物体の高密度充填を改善する新しい計算手法「Scalable Spectral Packing(以下 SSP)」を開発。この新技術により、積み重ね可能な3Dオブジェクトの超高密度パッキングが、かつてないスピードで3Dプリンティング可能となる。

SSPアルゴリズムにより生成された密度34.3%のパッキング image MIT CSAIL

高密度でインターロッキングのないSSPは、積層造形に大きな可能性をもたらし、非インターロック部品を高密度でバッチ3Dプリントすることで、3Dプリントのスループットを最大化できることを示唆している。
主任研究者のWojciech Matusik氏は「現在のバッチ3Dプリンティング手法では、容積(容器)の利用が非常に限られており、通常20%程度の密度しかない」と主張。「充填密度を上げることができれば、プリントプロセスの全体的な効率を上げることができ、製造部品の全体的なコストを削減することができます。私たちが得ている40%近い密度は、従来のアルゴリズムで得られた密度よりもかなり優れています」と語っている。

パデュー大学のベドリッチ・ベネス教授によれば「この研究は、3Dオブジェクトを効果的に整理するという長年の問題に対する画期的な解決策です。提案されたソリューションは、梱包密度を最大化し、ロボット工学から製造に至るまで、多くの実用的な分野で応用される可能性を秘めています」と言う。
この研究論文は、ACM Transactions on Graphics誌に掲載される予定で、8月に開催されるコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する世界最大の会議である「SIGGRAPH 2023」で発表を予定している。

SSPを使用してパックされたSIGGRAPHオブジェクト

この新しい計算方法を開発するため研究者たちは、容器と梱包される物体の両方が、小さな立方体であるボクセルで構成される3Dグリッドで表現。このグリッドは、どのボクセルが埋まっていて、どのボクセルが空いているかを強調する。各オブジェクトのための利用可能なスペースを決定するためSSPアルゴリズムは、各ボクセルで衝突メトリックを計算。これは、オブジェクトが重なる、つまり”衝突”する占有ボクセルの数をカウント。そして、オブジェクトは衝突が起こらないボクセル内にのみ配置することができる。
次に、オブジェクトに最適な位置を決定するため、局所的にパッキング密度を最大化するように設計された別のメトリックが各ボクセルで計算される。このメトリックは、オブジェクトとコンテナの壁、またはコンテナ内の別のオブジェクトとの間の距離を測定。距離が大きいほどメトリック値は高くなる。ここでの目標は、物体間の隙間を最小にすることであり、値が最も小さい場所に物体を配置することで達成できる。

最後にSSPアルゴリズムは、パッケージが”インターロッキングフリー”であることを保証しなければならない。これは、すべてのオブジェクトが割り当てられた場所に移動できるようにするために必要であり、また除去されるときに他のオブジェクトから分離されるようにするためでもある。
このプロセスには多くの計算が必要なため、研究チームは高速フーリエ変換(FFT)を採用。FFTは、梱包問題に適用されたことのない数学的手法で、ボクセルの重なりを最小化し、コンテナ内のボクセルの隙間を最小化するというタスクを、比較的小さな計算セットで解くことを可能にする。これにより、オブジェクトを配置する可能性のあるすべての位置についてテストを実行する必要がなくなり、パッキング速度が数桁劇的に向上。
実際、あるデモンストレーションでは、この技術によって670個の物体をわずか40秒で、約36%の梱包密度で効率的に配置することができた。さらに、6596個の物体を37.3%のパッキング密度で配置するのに必要な時間はわずか2時間だったとしている。

バッチ生産は、3Dプリンタによる大量生産において重要な役割を果たしており、さまざまな企業が大量生産を実現するためにアディティブ機能の規模を拡大している。


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