- 2021-11-9
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ピッツバーグ大学、フォトリソグラフィーに代わる新技術「PμSL技術」でマイクロウェルアレイを作製
ピッツバーグ大学でバイオエンジニアリングを専攻する博士課程の学生で、マイクロ生理学システムを研究するJulio Aleman氏は、特定のサイズ、形状、密度を持つミクロンサイズの小さなウェルであるマイクロウェルアレイを作製するため、BMF(Boston Micro Fabrication) の3Dプリント技術を活用している。
マイクロセルアレイの一般的な全体サイズは20mm×20mmで、Julioはこのサイズに基づいて2種類のマイクロセルアレイを作製することを検討。
- 孔直径0.6mm、孔間隔1.2mmのマイクロウェルを64個(8×8)配置したもの
- 孔直径0.15mm、孔間隔0.44mmのマイクロウェルを484個(22*22)配置したもの
各マイクロポアの底面の厚さは50μmである(マイクロポアは貫通孔ではない)
左はシリコン・パーツ:64マイクロウェル・アレイ、右はシリコン・パーツ:484マイクロウェル・アレイ
フォトリソグラフィーとマイクロ射出成形による伝統的な方法
このようなマイクロウェルデバイスを作製する最も一般的な方法では、先ずフォトリソグラフィーで原版となるモールド(マスターモールドとも呼ばれる)を作り、次にシリコン素材を使用してネガティブモールド(Negative mold)を作り、最後にシリコン樹脂(PDMS)をネガティブモールドに注入して最終デバイス (このプロセスは、キャスティングとも呼ばれる) として仕上ることになる。フォトリソグラフィーには、スピンコーティング、ソフトベーク、露光、現像、エッチング、レジスト除去など、多くの複雑な工程が含まれ、それぞれの工程には、クリーンルーム、フォトレジスト、精密マスクなどの特殊な使用環境、設備、素材が必要とされる。これらの要因により、フォトリソグラフィーはコストと時間がかかり、最終パーツを作るのに数ヶ月以上かかることもある。 さらに、研究者は最初の設計に細心の注意を払わなければ、再設計に多大なコストと時間がかかってしまう可能性もある。
超高精細3Dプリント技術「PμSL」 を用いた低コストで効率的な代替案
BMF社独自開発の「PμSL技術(Projection Micro Stereolithography)」は、紫外線を面単位で照射することで、感光性樹脂を迅速に層ごとに硬化させる造形技術の一種であり、2µm/10umの光学高解像度と加工公差±10µm/25umで、複雑かつ微細な部品を製造することができる。フォトリソグラフィーやマイクロ射出成形などの従来の加工方法と比較して、BMFのPμSL技術は金型やマスクを必要としないため、コストを大幅に削減でき、リードタイムをわずか1日まで短縮することができる。高精度を標榜する他社製3Dプリンターはあるが、精度、加工交差、造形時間の点でBMFのレベルにはまだ達していない。
実使用と効果
ピッツバーグ大学の研究員は、BMF社のエンジニアと詳しく打ち合わせを行い、樹脂種類、色、寸法などを確かめて、BMF社にマスターモールドの製作を依頼。Julio Aleman氏からは、想定以上の優れた効果を得ることが出来たとのフィードバックを受け取っている。
左はBMF社製64孔マイクロアレイ、右はBMF社製484孔マイクロアレイ
- リソグラフィーの複雑な工程を完全に排除し、注文からサンプル受領まで2週間しかかからなかった。
- 複数のモデルを高速で作製できることで、すぐに研究チームのメンバーに配布し、タイムリーに評価・修正することができた。
- マスターモールドを使用した逆型を10回程度作製した後、マスターモールドに大きな反りや歪みがないこと。
- マスターモールドをVPD(Vapour Phase Deposition)で塩漬けにすることで、マスターモールドのシリコンへの付着を抑え、マスターモールドをシリコンの逆型から分離しやすくした。
左はPDMS素材で作製した64孔マイクロアレイ、右はPDMS素材で作製した484孔マイクロアレイ
プロトタイプ・実験用の試作品に最適なソリューション
これまでBMFのPμSL技術は、精度面でトップグラスの評価を得ており、グローバルで400以上の民間企業と250以上の研究機関に選ばれている。2019年10月よりグローバル展開を開始し、日本市場に参入して間もない為、知名度はまだ低いのが現状だが、BMFの3Dプリンタはすでに、東京大学、早稲田大学、および民間企業にも導入されている。
BMFでは、試作品は小ロットや1個からでも対応でき、高精度、短納期、低コストなどの面で従来の精密加工方法よりも優れている。
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