AI駆動型3Dプリント義眼

フラウンホーファーIGD、AI駆動による新しい義眼の3Dプリント自動化手法を開発

ドイツ・ダルムシュタットの研究機関フラウンホーファーコンピュータグラフィックス研究所の研究者らは、世界初の3Dプリント義眼を開発する Ocupeye Ltd. と共同で、人工知能(AI)を活用した新しい義眼の3Dプリント自動化技術の開発に成功。研究チームはこの新手法により、自然な外観でより快適なカスタム眼球インプラントをより迅速かつ容易に製造できるようになったとしている。

AIによってデザインされた3Dプリント義眼 Photo : Fraunhofer IGD

目の病気に関する研究に資金を提供する慈善団体ムーアフィールズ・アイ・チャリティーによれば、世界的に義眼の需要は高く、800万人以上が義眼を使用しており、英国内だけでも6万から7万人が義眼を必要としている。しかし、従来の製造方法は時間が掛かり、精度や再現性に課題を抱えていたが、3Dプリント技術とAIを用いたこの新しい義眼は、従来の製造方法よりも80%時間を短縮することができるだけでなく、眼科医の労力負担を5分の1に軽減することができる。

3Dプリンタで作られた義眼は本物と見分けがつかない

この革新的な3Dプリント義眼は、はじめにプロトタイプのCasia 2 OCT(光干渉断層計)スキャナーを利用して患者の眼窩を3Dスキャンする。スキャンされた患者の眼球データはAIモデルに入力され、患者の眼窩に完璧にフィットするよう3Dプリント可能なデザインが生成される。AIによって生成されたデザインを「GrabCAD」ソフトウェアにアップロードし、Stratasysの「J750 Polyjet」マルチマテリアル3Dプリンターと「VeroVivid」素材を使用して義眼を3Dプリントする。
眼球はフルカラーで3Dプリントされ、患者の健康な眼の外観、サイズ、構造を正確に再現し、緊密で快適なフィット感を提供する人工眼球として提供されている。

3Dプリント義眼を装着した患者

従来の方法では8時間かかる眼球補綴物の設計を、この新しいアプローチを用いることで設計と3Dプリントをわずか90分で行うことができるという。
ムーアフィールズ眼科病院で行われた初期の臨床試験では、10人の患者に対して3Dプリンタで製造された義眼が提供され、試験完了後には200人以上の患者がこの革新的な3Dプリント義眼を受け取っている。
フラウンホーファーの研究チームは現在、技術のさらなる改良とコスト削減を目指し、より多くの人々に利用してもらえるよう計画を進めている。さらに、この技術が将来的に、歯科修復物や顔面補綴物の製造にも応用可能であると考えており、さらなる医療分野での革新を促すものであるとしている。


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