ORNLとBoeingがWAAMで約2トンの大型金型を製造、航空機複合材の量産効率向上と軽量化を支援
米国エネルギー省オークリッジ国立研究所(ORNL)と世界最大の航空宇宙企業 Boeing(ボーイング)は、航空機用熱可塑性複合材部品の生産効率向上を目的に、約2トンの大型スチール金型を3Dプリンターで製造。NASAの高効率複合材航空機製造プロジェクト「HiCAM計画」を支える実証で、大型航空機製造における金属積層造形の可能性を示した。

今回製造されたのは「Stamp Form Die(SFD)」と呼ばれる成形用金型で、高さ約1.8m、幅約1.2m、重量は約2トンに達する。航空機のドアなどに使われる熱可塑性複合材を加熱し、2つの金型で挟み込んで成形するための大型工具である。従来、この種の金型は鋳造や鍛造、切削、穴あけなど複数の工程を組み合わせて製造するが、ORNLとBoeingは大型金属3Dプリンターに相当するWAAM(ワイヤ・アーク積層造形)を使い、より柔軟で効率的な製造方法を検証した。

造形にはORNLの「Arc-1」を使用。ロボットアーム先端の溶接トーチで金属ワイヤを溶かし、材料を一層ずつ積み重ねる仕組みで、今回の金型は約8週間かけて製造された。特徴的なのは、構造部分には強度と剛性を担う軟鋼、表面には耐食性や耐久性に優れるステンレス鋼を配置した点にある。さらに、通常はドリルで直線状に加工する加熱・冷却用の流路を、金型の形状に沿って曲線状に内部へ組み込んだ。
一方、大型金属造形では、冷却時に生じる内部応力によって金型が反ることが大きな課題となるが、研究チームは仮設の補強リブを追加し、コンピューター上で32回のシミュレーションを実施。変形を事前に見越した設計補正を行うことで、最終形状を目標値から数ミリ以内に収めた。造形後はBaker Industriesで焼鈍による応力除去や仕上げ加工を行い、Boeingの要求仕様に適合させている。

この成果は、NASAが進めるHiCAM計画の一環として、複合材航空機の生産速度向上や軽量化につながる技術として期待されている。ORNLとBoeingは2016年にも777X向け大型工具を3Dプリントしており、航空機分野では部品そのものだけでなく、製造に使う金型や治具への活用も着実に拡大してきた。今回の実証は、航空宇宙に加え、自動車やエネルギー分野の大型熱可塑性構造物へ応用できる可能性も示している。
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