3Dプリンタの新しいキャリブレーション技術

1軸につき2つのモーターを使用する3Dプリンタの新しいキャリブレーション技術

3Dプリンタのプリント品質は、ハードウェア、使用材料、設定パラメータの精度など、いくつかの要素によって大きく左右される。その中で、X軸・Y軸・Z軸の正しいキャリブレーションは、高品質のプリント結果を得るために不可欠である。メカトロニクス・エンジニアであるヴァンサン・ベネ氏は、これらの軸の自動キャリブレーションを大幅に改善する革新的な手法を開発した。

ベネ氏のアプローチの特徴は、プロセスのシンプルさと効率性にある。従来の3Dプリンタは、各軸に1つのモーターを使用し、XとYの動きにヒステリシス(システムが変化に遅れて反応する傾向)の問題があり、位置精度を損なう可能性がある。ベネ氏が開発したプリントシステムは、各軸に2つのモーターを使用して軸により大きな剛性を与え、ヒステリシスを一定の値に制限し、プリンターのファームウェアの適切な調整によりこれを完全に無効化できる可能性を提供する。ただし、この方法は使用時に事前の校正が必要となり、軸の直交性校正に対する直接的な解決策は提供していない。

ベネ氏はこの制限を克服するため、XおよびY軸を中心としたプラットフォームの傾きを調整できるシステムを開発。このシステムでは、傾いたプラットフォーム上の実際の位置をレベリングセンサーを用いて検出し、予想される位置と実際の位置の間の差異を利用して、軸の正しい位置決め角度を計算し、その直交性を保証する。

従来の3Dプリント方式でありながら高い精度と高速化を実現した「Bambu Lab

ベネ氏が提案する技術革新は、大型3Dプリンタにも適用可能なより正確な校正を提供するだけでなく、製造コストを削減する可能性がある。不正確な角度をソフトウェアで修正できるため、より低品質で安価な部品を使用することができる。

現段階ではこのソリューションは未だプロトタイプの段階にあり、オープンソースの3Dプリンティング・ファームウェア「Klipper」に統合することを目指している。ベネ氏はこの技術をオープンソースとして公開し、技術革新の共有とさらなる発展を促している。この技術が広く採用されることにより、3Dプリンティングの用途はさらに広がり、多くの産業での生産性とイノベーションが加速することが期待されている。


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