広島国際大学、3Dプリンターでアスリートの義手開発
広島国際大学リハビリテーション学科義肢装具学専攻の森永浩介講師は、成長期の障害者アスリートが体形の変化に応じて手軽に義手のソケットを作り替えられるよう、3Dプリンターを活用した製作に取り組んでいる。
生まれつき左前腕が形成不全の高校生アスリート、植田百音さんは、3Dプリンター製の義手によって小学6年生の頃からクラウチングスタートが可能になり、記録更新に挑んでいる。彼女の義手とソケットは、8月5日から福岡県北九州市の北九州国際会議場で開催される「国際デジタルモデリングコンテスト(IDMC)2024」に展示される予定だ。
3Dプリンターによる義手の利点
3Dプリンターを使用することで、成長に合わせた義手の作り替えが容易であり、費用も大幅に削減できる。従来の義手は、義肢装具士が使用者の体に合わせて製作するため、ソケット部分だけでも約35万円の費用がかかる。特に成長期の子供には新調が必要であり、その度重なる負担が問題となっていた。
この課題を解決するため森永講師は、3Dプリンターを用いることでこの問題を解決できると考えた。植田さんの腕の先端部を収めるソケットを成長に合わせて製作し、複数の材料を用いて安定した製造と強度試験を重ねてきた。その結果、3Dプリンター製のソケットの製作費は約900円に抑えられ、材料の再利用も可能となった。
森永講師が製作したスプリンター用義手とソケット
植田百音さんの活躍
植田さんは幼い頃から短距離走が好きで、地元のクラブに所属。小学校高学年になると、他の選手がクラウチングスタートを始める中、腕で体を支えられない彼女はスタンディングスタートのままで、スタートダッシュが遅れることが悩みだった。この問題を解決するため、森永講師はソケットと義手を製作し、技術面から彼女の記録更新をサポート。
クラウチングスタートをする植田さん
植田さんは100mの選手として活躍しており、2022年10月に栃木県で開催された第22回全国障害者スポーツ大会(全障スポ)では19秒75で3位に入賞。今年5月の第18回広島県障害者陸上競技大会では18秒75で大会新記録を樹立し、10月に佐賀県で開かれる第23回全障スポへの出場も決まった。
森永講師は「10代は子供にとって運動能力が大きく向上する時期。成長に合わせて安価に作り替えのできる義手に関心を広げていきたい」と語っている。
関連記事
3DP id.arts の最新投稿をお届けする「Newsletter 3DP id.arts」への登録はこちら
最新情報をお届けします
Twitter でid.artsをフォローしよう!
Follow @idarts_jp