3Dプリント技術でゴキブリを遠隔操作

3Dプリンタで作られたバックパックが昆虫をブルートゥース制御のサイボーグに変身させる

理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター、早稲田大学、シンガポール南洋理工大学等の国際共同研究グループは、3Dプリント技術を用いて、ゴキブリを遠隔操作可能なサイボーグ昆虫に変身させる装置を開発した。
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再充電可能なサイボーグ昆虫

本研究では、体長約6cmのマダガスカルゴキブリの背側に、光エネルギーで再充電可能な電源ユニットを含む電子部品をゴキブリの胸部背側の曲面に沿って取り付けた。無線移動制御モジュールとリチウムポリマー電池を取り付けるためのバックパックは、マダガスカルゴキブリの正確な3Dモデルを基に胸部背側の曲面形状と一致する柱状構造に設計され、Formlabs の「Form 3」3Dプリンタと、弾性ポリマー材料である「Elastic 50A」を使って3Dプリント。3Dプリント技術を活用することで、このような柱状構造によって昆虫の個体間の形状の違いによらず、曲面に完全にフィットし、硬い電子デバイスを安定的に実装することができる。

サイボーグ昆虫の概要と3Dプリントバックパック

また、超薄型有機太陽電池モジュール取り付けのため、昆虫の腹部断面を観察したところ、腹部の変形中に腹部節が部分的に重なっていることが分かった。そこで、腹部の動きの自由度を確保するため、ポリマーフィルム上に作製された超薄型有機太陽電池を、接着剤領域と非接着剤領域を交互に配置する「飛び石構造」で昆虫の腹部背側へ貼り付けた。

超薄型有機太陽電池の腹部実装

この電荷を利用して、外部サーバーからの信号を受信する無線モジュールを駆動し、ゴキブリの腕輪に電気ショックを与えて信号を受信させることが可能となった。この装置を使ってゴキブリを障害物コースに誘導しようとした初期の段階では、太陽電池が厚すぎたり、硬く取り付けられていたりしてゴキブリの動きが鈍くなり、自己修復が困難であることが判明。しかし、太陽電池を固定している厚さ3μmのフィルムを樹脂製の接着剤に置き換えることで、昆虫サイボーグはより軽快に動くようになった。

再充電可能なサイボーグ昆虫の無線通信による行動制御

腹部の変形は多くの昆虫で見られることから、この研究で提案した飛び石構造で超薄型の電子素子を取り付ける戦略は、マダガスカルゴキブリに限らず他の昆虫種にも適用可能で、基本動作中の昆虫の胸部と腹部の変形を考慮すると、胸部に剛性または柔軟性のある要素を置き、腹部に超軟質デバイスを取り付けるハイブリッド電子システムは、サイボーグ昆虫に効果的な設計で、研究チームは、本成果によって昆虫の寿命が続く限り、電池切れの心配なく長時間かつ長距離における活動が可能となり、サイボーグ昆虫の用途が拡大すると期待している。

今後、より薄型化された制御回路を用い、センサーなど他のコンポーネントと組み合わせることで、サイボーグ昆虫の機能をさらに拡大できると考えられている。


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