大型3Dプリント技術で進化する高級ヨット製造

Ferretti GroupとCaracolが共同で高級ヨットPershing GTX116の主要部品を3Dプリント

イタリアの高級ボートメーカー Ferretti Group(フェレッティ・グループ)は、最新モデルである高級スポーツヨット「Pershing GTX116」の製造において、イタリアの3Dプリンタメーカー Caracol の大型積層造形(LFAM)技術を採用した。​この協力により、同社は空気取り入れ口グリルとウィンドシールドバイザーを3Dプリントで製造し、ヨット建造における重要な革新を実現した。

従来のヨット部品は、手作業によるガラス繊維積層によって製造されていたが、この方法は熟練工による多くの労力と複雑な形状のための複数の型が必要であった。​その結果、生産コストの増加、リードタイムの延長、材料廃棄物の増加、カスタマイズの制限などの課題が生じていた。

フェレッティは、CaracolのHeron 300システムを活用することで、これらの課題を解決し、デジタル設計から直接複合材料部品を3Dプリントすることが可能となった。​これにより、材料費と労働コストの削減、迅速な試作と反復が可能となり、複雑な形状の部品も容易に製造できるようになった。​さらに、材料廃棄物の削減とエネルギー効率の向上により、持続可能性も大幅に向上した。

エレガンス、快適性、高速性能を兼ね備えたPershing GTX116は、全長35メートルのスポーツヨットで、CaracolのHeron AMシステムを使用して3Dプリントされた空気取り入れ口グリルとバイザーを備えている。空力的に優れたグリルの材料は20%のガラス繊維で強化されたASAが使用されており、Heron 300システムの高精度エクストルーダーで製造され、強度と耐久性が確保されている。72時間掛けてプリントされたパーツは4200×400×400mmの大きさで、ゲルコートが施された最終的部品重量は40kgとなった。

Pershing GTX116は、大型積層造形技術の採用により、従来の製造方法と比較して生産リードタイムが50%短縮され、迅速な納品が可能となっただけでなく、材料廃棄物が60%削減され、環境への配慮も強化された。​さらに、最終部品は15%軽量化され、ヨットの性能向上に寄与している。

Caracolによる事例は、カスタマイズされた高性能ヨット部品の製造における可能性を示しており、先進的な船体構造、内部構造、さらには完全に3Dプリントされたヨットの試作にも重要な役割を果たすと期待されている。


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