造形後に低温で変形する感温フィラメントを検証

3Dプリント後30℃程度の低温加熱で簡単に変形する特殊ポリエステルフィラメントを検証

繊維事業大手ユニチカ株式会社(以下 ユニチカ)は、3Dプリント後に低温で変形可能な3Dプリンタ用ポリエステルフィラメント『3Dプリンター用 “感温性” フィラメント』を開発。

今回は、入手したばかりの『3Dプリンター用 “感温性” フィラメント』を使い検証造形をおこなってみた。

特殊ポリエステルフィラメント(仮称)の特徴

今回検証に利用した『3Dプリンター用 “感温性” フィラメント』は、高分子フィルム、樹脂材料などを開発するユニチカが研究開発中の3Dプリンタ用フィラメントで、3Dプリント出力された造形物をセ氏30℃程度に加熱することで、簡単に変形させることができるポリエステルベースの特殊フィラメントとなっている。

『3Dプリンター用 “感温性” フィラメント』について

  • メーカー:ユニチカ株式会社
  • 商品名:特殊ポリエステル樹脂
  • 材料径:1.75mm
  • ノズル温度:190~220℃
  • ヒートベッド温度:0~45℃
  • 融点:160℃
  • 変形温度:30℃~
  • 発売時期:2017年内
  • 価格:未定

造形条件はPLA同等

『3Dプリンター用 “感温性” フィラメント』の造形条件は一般的なPLA同等のため、特別な性能を有する3Dプリンタでなくても簡単に造形することができる。

検証時の3Dプリント環境

今回の検証造形には、小型高性能なFFF方式3Dプリンタ『MOMENT S』を利用。他社製品同様、社外フィラメントの使用は基本的にサポート対象外となるが、今回検証した”感温性” フィラメントも問題なく使用することができた。
また今回の検証では、定着性向上のため『3M™ 3Dプリンタープラットフォームシート 3099AB』を使用しているが、この”感温性” フィラメントは3Dプリンタープラットフォームシート 3099ABとの相性もよく、30回以上使用したシートにもしっかりと喰いついている。

造形から加熱

形状や大きさ(厚さ)にもよるが、3Dプリント直後の造形物は、一般的なABS同等かすこし柔らかいように感じられる。

出力された造形物は、30℃以上に加熱することで簡単に変形する。
今回は短時間で熱を加えるため、ドライヤーで30~60秒程度温めてみたが、無理な力を加えることなく簡単に変形させることができた。

今回はドライヤーで加熱したが、造形物の大きさや厚さ、形状によっては熱の伝わりにムラが出て変形しづらくなる可能性もあるため、30℃以上のお湯など、出来るだけ均等に熱を伝えやすい方法で加熱するのが良いかもしれない。

加熱変形から硬化

加熱~変形させた造形物は、温度低下と共に硬化がはじまる。30℃程度に加熱した造形物は比較的短時間で温度が低下(硬化)するため、用途によっては効率よく変形~硬化させることができる。
また、変形後の形状を安定的に保持する場合は、80度以上のお湯に浸し硬化させる必要がある。

硬化後は、PLA素材などの造形物同程度に硬くなり、形状を維持する。
そして硬化後の状態から再び30℃以上に加熱すると、改めて造形物を変形させることもできる。

例えば、体系に沿って成形した3Dプリントギプスなど、体温によって僅かに変形と硬化を繰り返すような物に応用しても面白いかもしれない。

アイディア次第で広がる用途

以前紹介した「形状記憶フィラメント SMP55」や「熱によって変化する新たな4Dプリント技術」のように、外的要因により変形や記憶する4Dプリント技術の研究は、医療分野などを中心に今後も発展が期待されているが、非常に特殊な性質をもった素材のため、ユーザー側もその特性を十分に理解した利用方法を考える必要がある。


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